みんキチVol.25│アーティスト&ニッターとして、糸選びから洗練された編み物を普及する。


アーティスト&ニッター
近あづき
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1986年生まれ。千葉県出身。美術大学の空間演出デザイン学科ファッション専攻卒業。生家が洋裁教室だったことから糸や布がある環境で育ち、編み物の技法を用いて立体作品を作り始める。ファッションブランド「YAB-YUM」2010-11AWコレクションにて『pipi-goldfish』名義で作品提供を行い、以降、国内外のコレクションを中心にニットアイテムの制作、CMやテレビへの衣装、技術協力などを行っている。
また横浜・黄金町にて、家庭用編み機、手編みで自由に作る黄金町芸術学校あみもの教室を主宰している。アーティストとしては、環境から影響を受けて形を変える状態や感覚をテーマに立体やインスタレーション作品を発表している。

ようやく涼しく秋めいてきました。Tシャツばかり着ていた日々からニットが恋しくなる季節へ!今回ご紹介する近(こん)あづきさんはアーティストとニッターという二つの肩書をお持ちの方。実は、まだ酷暑の8月に「みんなのKICHI」のイメージと被る『黄金町スタジオ』へ視察へ。残念ながらその日はCLOSEDでしたが、奇跡的に近さんがお仕事中で、「黄金町バザール」のご案内など頂いた。もともと編み物上手な母の影響で、私も二十歳頃から数年間、母と編み物教室へ通っていた記憶があり。ワークショップを横須賀でもお願いできたらいいなー!と思い、今回お声がけ。近さんファン、ジワジワと増殖中でワークショップもめちゃくちゃ人気。アーティストとしての話題はまた別途させていただくことにして、今回はニッターとしての近あづきさんの魅力に迫ってみた。(※この取材はオンラインで行いました)

洋裁教室の生家で、教員の両親のもと育つ。

—私の母が編み物好きで長いことお教室に通っていて、私も一緒に数年通っていたのでニット大好き。一世を風靡した昭和の編み物ブームから、今また編み物熱が再燃中。昭和の頃は高い技術があっても何だか垢ぬけず。近さんのセンスはそれとは違って素敵です。ニットデザイナーとは違うのですか?

デザイナーではないです。私は編み物教室を運営しているのと、ニット製品を作りたいメーカーさんのお手伝いをしています。以前は五反田で月1編み物教室をしていましたがコロナになって閉講。今は黄金町のアトリエを借りて制作しています。

※黄金町パンとコーヒーマルシェのサイトはこちら
※編み物教室は黄金町芸術学校あみもの講座

—ファッションを専攻されたのは、お洋服や、モノ作りがお好きで?

私の生まれた家では、祖母が洋裁教室をしていました。そのため、家にファッション雑誌や生地がたくさんありました。また、洋裁教室の傍ら、オーダーメイドの服を作っていたので自然とファッションを生業にしたいと思いました。ただ洋服はモードや流行、身につけたいモノを作らないとならない。それと、自分が作りたいものは違いました。

—手先が器用なのはお婆様からの遺伝ですね。毛糸との出会いはいつ頃でしたか?

家にあった糸や針を手にして日常的に遊んでいました。市販のおもちゃより、手芸材料がたくさんあったので。毛糸と出会うというより、毛糸もその中にありました。当時は刺繍やビーズ遊びに夢中でした。

—刺繍やビーズのエッセンスが、ワークショップ時に用意されていた毛糸に表れていて、心躍りました。編み針を持つようになったのはいつ頃で?

それも自然とでした。父も、編み物をしていましたし。親世代の男性で編み物されている方、結構います。皆、あえて言わないだけで。両親の職業は教員で、父は地理、母は家庭科の先生でした。

おうち時間が増えたコロナで業績アップ!

—おもしろい!紐解いていくといろいろと納得します。モノ作りって楽しいですよね。コロナによって変化したことはありましたか?

コロナになって業績があがりました。教室は開けなくなって生徒さんもそこでリセットされましたが、それ以外の仕事で新しいクライアントが増えた時期でした。

—皆が家に籠らないといけない時に業績アップされたのはすごい。お教室の生徒さんは今どのくらいいらっしゃる?

完全予約制で生徒の人数も月によって異なります。月謝制ではなく登録制でもないので、いつでも参加して頂けますし、行けないという時はそこでいったんお休みが可能です。短時間からお好きな曜日時間でレッスンできるので、働いている方も多いです。

—作品のコンセプトとか、作りたいモノはありますか?

仕事では依頼されたメーカーのブランドが、さらに飛躍できるモノ作りのお手伝いができたらいいなと思います。一緒に成長できたらうれしいです。

—既に大御所感がありますね。

いえいえ。私なんてまだまだ若手の下っ端です。技術面も人生経験も豊富な、尊敬できる先生方が全国各地におられます。。

ニットはLEGOブロックみたいに自由自在。

—ところで横須賀は不登校児ワースト1です。家にずっといる子も多い。勉強でなく、表現できる場が必要なんじゃないか?という視点で「みんなのKICHI」では「表現の教室」をつくろうと思っています。文章、アート、音楽などの手段で、その人ならではものをアウトプットできる場を創ろうと。たとえば家にいるなら、編む技術を身につけてはどうか?と。

私の同級生にも不登校児がいました。学年の半分が不登校になった学校も知っています。地域柄ちょっと大変でしたし、私の頃は中学校が軍隊みたいな所でした。学校に行かなくなったらもう行かなくなるかなーという気持ちが強くて。諦観して通っていました。

家に引き籠っている子に編む技術を……というお話ですが、誰しもがそうしたことに向いているわけではないですよね。物事を伝える方法はひとり一人に合った方法が違う。以前、福祉施設でもワークショップをすることがありましたが、全員手作業が向いているという前提は違うんだなと感じました。年齢層も中学生以上になると自我もありますし難しいかなー。みんなを集めて一堂に画一的なプログラムを行うのは、難しいかもしれません。

—隅々までよく観察をされていらっしゃいますね。ちなみにオンラインレッスンは?

コロナの時に挑戦しました。でも、個人的には編み物とオンラインはあまり向いていないと思います。動画を撮るにしてもかなり画角に拘らないと難しい。相手の手元も見えないと指導もできない。挑戦してみたものの、これでお金を頂くのはちょっと……って思いました。オンライン専門でいろいろ考えてやれば、やり方はあると思います。私はそこまで撮影技術はなく、YouTubeなどもやっていません。

—何事も適格に判断されますね!まだお若いですが、この先どういうビジョンをお持ちですか?

活動範囲を日本に限定せずに、海外での仕事の機会を増やしていきたいです。私の周りでは東南アジア、中東あたりに出て行かれている方が多いです。皆さんだいぶ先を見ていますね。デザインで好きなのは南米です。

—日本から才能が流出するわけですね。では最後に、ニッターとして作品にかかわる意気込みを教えていただけますか?

これはニッターとしての私見で、家庭や個人での手仕事の話ではないことを前置きします。

才能が流出するというと悪いことのようですが、人口減少社会で国内マーケットが縮小していることを鑑みると国内のみでマーケットを構築するのは、買い手がいない市場にわざわざ物を置くような行為だと思います。ですので、国外においての日本生産品の価値創造とそのプレゼンテーションがますます重要になるのではないでしょうか。

私としては地に足をつけて、できることを誠実に、着実に、やっていくだけですが、そのようなヴィジョンを持ったお取引先様と一緒に仕事が出来たらと思っています。

また一方、私の仕事は個人の手仕事に大きく支えられている部分があるので、草の根での手仕事の普及活動にも力を入れていきたいです。こちらは、楽しくないと続かない活動だと思っているので、気楽に遊びのような感覚で、ものづくりを体験していただけたら嬉しいです。



★10月のイベントスケジュール
10/1(水) 黄金町パンとコーヒーマルシェ 編み機ワークショップ
10/19(日) 黄金町パンとコーヒーマルシェ かぎ針編みワークショップ
詳細はこちら

★編み物教室はこちらへ
黄金町芸術学校あみもの講座 

—ありがとうございました。


何事も真摯に捉え、的確な答えを編み出してくださるあづきさん。ニットという表現手段を用いて、こんなにオシャレでワクワクする作品を創れるのは素晴らしいです。今回初めてワークショップに参加し、珊瑚色のストールを作りました。糸選びも楽しかった!また素敵な時間を過ごしに伺います。早く寒くなぁれ!
(2025年9月取材・執筆/マザールあべみちこ)

取材の一部を音源データでご紹介します