みんキチVol.23│三浦一族の誇りをつなぐ満昌寺から、横須賀の良さを広めていく。


満昌寺第21世住職
永井宗寛さん
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1959年横須賀市生まれ、横須賀市育ち。大学卒業後、鎌倉建長寺派専門道場にて禅の修行、副住職を経て、平成22年より満昌寺住職。
座右の銘は「人に親切、自分に辛切」

檀家さんだけでなく、広くお寺に関心をもってもらえるように音楽ライブ、坐禅会などさまざまなコンテンツを発信。横須賀市大矢部にある満昌寺は大変歴史のあるお寺。850年という壮大な歴史を背負う立場から、この街の行方をどう捉えていらっしゃるのか。完全無料で開催するさまざまなイベントは、幅広い年代層に足を運んでもらっているとのこと。三浦義明坐像修復のため10月15日までクラウドファンディング支援も募集中。第31世住職の永井宗寛さんに、お寺から見る街の行方について伺いました。

月一開催の坐禅会は、子ども坐禅会も実施。

—横須賀で生まれ育ってこられたご住職が感じられている街の景色。何が変わって、どう改善していくべきとお考えですか。

私には長男、長女、次男と3人の子がいますが、上と下で10歳離れています。3人の子どもの関係で長く地元小・中学校でトータル10年ほどPTA会長をお引き受けしました。当時と今では違いがありますが、その前はもっと違う。それを肌で感じています。毎週学校へ定期的に通いました。軽い気持ちで引き受けましたが結構思い役職で、学校のいい面とそうでない面が見えてきました。ほとんどは役員のお母さん方が力を尽くしてくださっていました。あれから10年、20年経って、学校も変わったと聞いています。
ヤンキー全盛期で暴力事件が起きて。それが落ち着いてからは陰でいじめが起きるようになりました。

—だんだん環境が変わってきたのですね。横須賀は不登校がワーストワンです。家庭の中だけで解決できないこともあります。

長男の時はなかったですが、次男の時は増えていると聞きました。10年の間にずいぶん変わったのです。PTA会長を務めてから評議員という役職も務めました。地域に長く関係している人が、学校のアドバイスをする役割で私は7,8年務めました。その時、不登校も議題になりました。学力サポートに学習支援をする元教師の方もおられました。寺が同じことをできるか?というとなかなか敷居が高く入りづらいのですが。

—駆け込み寺といいますが、困っている人が扉を叩くようなことは?

こちらから出ていかないとなかなか。満昌寺では子ども坐禅会を開催しています。毎回20名くらい参加者がいますが10年前は数名でした。年齢は保育園児から。坐禅をするのは早い。家族でいらっしゃいます。親御さんもきょうだいも参加されますから年代が幅広い。長い子は中3まで通ってきます。近隣だけでなく遠方から車でお越しになる方も多い。生活の中に月一坐禅というのが組み込まれている。一般の方がお寺に入る機会が少ないので、こういう形で門戸を広げています。

—おもしろいですね。坐禅会は無料開催で?

そうです。大人の坐禅会は1時間以上やります。長い人は30年以上通われています。30代から70代までの方が来られる、初心者向けのものです。それが終わってから子ども坐禅会。小さな子でも数回来ると慣れるようです。黙って座ります。最初の1時間はそわそわしますが、何回か来るうちに変わりますね。子どもは続きますが、大人の方が1回きりになったりします。

学校で講和や坐禅会も出張して開催。

—何かトークライブとあわせて坐禅会企画させていただきたいです。

一般向けにはあまりなくて、主に地元の方対象とか、檀家さん向けのものですね。副住職は法話をする「布教師」の資格を持っています。臨済宗のネットワークで四国なら転々とたくさんのお寺を回って話してきます。地方に行くと1週間くらいずっといろいろなお寺を巡ります。それは仕事ですので、勉強もしなくてはいけません。資格を持った和尚さんも必要ですし、依頼もあちこちから来ます。

—なるほど。全国を旅してうらやましいです。

私も学校に呼ばれて話をする機会があります。こちらから行かないと向こうからはなかなか難しいので。お寺でイベント自体がなかなかまだ。外部を入れたくないというのがあります。横須賀は保守的で、それはもうずっと前からのことです。軍港があり、保守的な基盤もありますし住んでいる人もあまり動かず横須賀に根差している。よそから来ると入りづらいなと思われる。それは住んでいる私も感じています。

—そうはいっても自分がやろうと思っていることは、納得いく形でカタチにしたいと思っています。

最近は変わってきたと思います。人口減少もありますから、若い人をもっと入れたいと行政も考えています。若い人が増えると柔軟な考えも増えるはずです。坐禅会も参加者の半分以上は横須賀に移住されてきた人。前からここに住んでいる人はあまり興味を示さない。子ども坐禅会も同様です。9月はお彼岸時期ですので第2日曜日、14日に開催します。大人は7時から8時、子どもは8時半から9時です。参加希望者は予約をお願いしています。お茶を飲む、お経を読む、坐禅をする、休憩を挟んで講和を聞き、また坐禅をする。終わるとすぐにお掃除。それが終わって解散です。そうした一連の流れも説明しないとならないので事前予約や開始時刻の30分前にお越しいただくようにお願いしています。

—そうした流儀やタイムスケジュールを最初に把握してもらうのが大切なのですね。

なにがなんだかわからないうちに坐禅会が終わってしまうのは申し訳ないので。坐禅会は義明会という組織がある。会長、副会長、会計など役職がいます。会長が主に参加者に説明します。

横須賀に刻まれた歴史の深さを知ってほしい。

—この先、横須賀がどんな街になったらいいなとお考えですか?

若い人が自由に過ごす空間がもっとあってほしい。お年寄りはたくさんいますが、交流する場を増やしたいですね。ご高齢の方は年の功で知っていることもあるので、若い人と結びつける何かがあるといいし、共存ができれば。横須賀にはたくさん良い所がありますので。

—この街の良さを改めて訴求するには何が必要でしょう?商業の活性化ですか?

商業ベースでは横浜には勝てませんね。横須賀は地形的に海と山に囲まれて環境が良い。そして歴史的にも語れることがたくさんある。そういうことを知らずに住んでいる人も多い。坐禅会もお寺で開催しているだけでなく、市内の半部以上の小学校へ出向いて開催しています。そこで、お寺の歴史を語ると驚かれます。親御さんも先生も知らないのです。満昌寺もそうですが歴史的なモノが残っている。そういうものをもっと紹介してほしいし、よそに自慢できることもいっぱい。PRして知ってもらって足を運んでほしい。観光目的でなくても、まず地元の人へ知らせませんと。

—歴史探訪というか。歴史に関心をもてば、もっと横須賀愛が深まるんでしょうね

横須賀イコール米軍基地、黒船のペリー来航などが強いイメージのようですが、鎌倉時代からある歴史に注目してほしい。市で情報発信もようやくされだしました。

—私は個人的に横須賀美術館が素晴らしいので自慢したい場所です。でも新しいものばかりになるのは嫌ですし、古くからの文化を伝えていくことが大切ですね。

横須賀は保守的だからこそ残ってきたこともあります。これからいろんな方法で、できることがあると思います。ひとつには円通寺跡を開発する計画。古いお寺があった所なので、自然の状態で残してほしい。宅地開発などはしないでほしいんです。

—なるほど。そういえばご長男の副住職さんはバンド活動もされていますね?

ドラムと作曲を担当しています。臨済宗建長寺派 林香寺 住職の川野泰周さんはボーカルです。見事にうまい。慶応医学部経て医師として精神科医になってから、お寺の跡取りとなるべく3年間修業して、それで僧侶となってから再び医師としても歩まれて今はみなとみらいにクリニックを開設されて二足の草鞋で仕事に従事されています。バンドは4名で構成されています。あちこちで演奏していて、NHKが注目してくださり取材されました(9.11に放映)。僧侶としての仕事の傍らでバンド活動もしていることを取り上げられました。こういう放送をきっかけに多くの方に満昌寺のことを知ってもらえたらと願っています。

—ありがとうございました。


お寺は街のコミュティではないか?という想いで今回ご縁を頂いて取材させていただきました。なかなか敷居は高いのでしょうけれど、歴史を紐解くことの大切さをかみしめました。850年もの歴史を潜ってきた三浦大介義明公の御坐像を前に、身が引き締まる思いでした。坐禅会はマザールでも過去に何度か企画開催してまいりましたが、今度は満昌寺で坐ってみたいです。(2025年9月取材・執筆/マザールあべみちこ)

取材の一部を音源データでご紹介します