みんキチVol.17│罪悪感を拭えない母のリハビリとして、子育てママのよりどころでありたい。


株式会社LINK
代表取締役・永井由美さん


1980年生まれ。秋田県出身。3児(1男2女)の母。
大学卒業後、日本マクドナルドホールディングス株式会社の営業管理職を経て、若年層・女性向けのキャリアカウンセラー・講師業に従事。
学部編入し「母親向けキャリア支援」の専門知識を習得し学士(心理学)を取得。
2018年「子育て支援事業を推進するクライアントの想いをカタチにするためのコンセプトメーカー」を目指して、株式会社LINKを立ち上げる。
子育て支援施設「親子サロン・保育施設 “結”」を運営。コンサルタントの立場から全国数々の “親子のサードプレイス” 創出プロジェクトを統括。現在、キャリア支援に加えて親子サポートの必要性や課題解決に関わる講演・ワークショップを開催。子育て中の親へのメンタルケアから親子の笑顔を地域へ広げる独自アプローチまで、幅広い親子支援を行うことで地域活性に貢献することを目指す。

鴨居で『mam&kids salon 結-Yui-』と汐入COASKAで『baby&tot place 結-Yui-』の2か所を運営する株式会社LINK。「みんなのKICHI」を始めるにあたって、この人に会ってみて!と何人もの方に推薦されてきたのが今回ご紹介する代表の永井由美さん。長女、次女、長男と3人の子育てを経験するなかで、こんな場所があったらいいのに!もっとこういうお母さんが増えたらいいのに!という想いをもとに立ち上げられた事業。巡り巡ってある場所で偶然遭遇できました。このサロンを始めて7年目。変わったこと、変わらないこと。子どもを育てる上で大切にしていることとは。たっぷりお話お聞きしました。

結-Yui-を始める原動力となった子育て中の出来事。

—これまで「永井さんに会った?」と何人もの方に聞かれてきて、先日偶然お会いできてラッキーでした。3人のお子さんの子育て真っ最中ですが、もっと小さな頃に結-Yui-を始められたんですね?

今、高2の長女、中2の次女、小4の長男の3人子どもがいます。
長女を出産して半年くらいは産後鬱っぽくて子育てがつまらなかったし、かわいいと思えなかった。自治体の『こんにちは赤ちゃん訪問』で保健師の訪問があって、心理検査をした時にママの鬱度を測定され、めっちゃ引っかかり(笑)。私は心理学部卒業しているので、これを書いたらエラー出るとわかっていても、書かざるを得ない状況でした。

—今は、そういう訪問サポートもあるんですね。

横須賀は子育て支援もいろいろありますが、広報が下手で市民に届いていない。室内の遊び場が横須賀には少ないのと、当時は「愛らんどよこすか(子育て広場)」が無人でした。行っても遊具が置いてあるだけ。誰とも話せずに帰ってきてから、もう行かなくなった。今は子育てサポーターが常時いて、子育て相談も受けてくれるようです。

—自治体はハコだけ先でしたか(笑)。由美さんが居場所を作るきっかけになったこととは?

「あそぶことは生きること」というボーネルンドのコンセプトに感動して。みなとみらいにあるボーネルンド・キドキド(KID-O-KID)をよく利用していました。キドキドは親子の遊び場。子どもが喜んで体を使い遊べる場所ですが、親は帰る頃にはヘトヘトに。こういう場所にスタッフがいて、親はお茶が飲めたら幸せなのになーって。するとオムツ替えコーナーに「遊び場プロデュースします」と張り紙があって、これだ!とピンときた。鴨居に義父所有で何年も放置されていた建物があった。義父にここを親子の遊び場にしたいと相談したら快諾してくれまして。そこからボールネンドにコンタクトし、ソーシャルビジネスを勉強し。2016年から構想を練って動き出し、2年掛かって2018年に結-Yui-が誕生。当時末っ子はまだ6か月でした。

—3人ちびっ子を育てながら、2年の準備期間もがんばりましたね。

汐入のCOASKAにあるスタバは9年前までKIDSスペースがあった。おもちゃや絵本がたくさんあり、バリスタの方が月1回資材を使って親子向けワークショップをしていたのに、突然なくなった。子連れは単価も安く、うるさいし、回転率悪いから?と。理由はわかりませんが。「またひとつ子連れ歓迎の店が消えた」と残念な気持ちが、自分でそういう場を作ろう!という原動力に。

私たちはどこへ行けばいいんだろう?1歳になった息子が街中で「ちょろちょろ歩かせてんじゃねぇよ!」と知らない人に罵倒されたことも。ちょろちょろするのが子どもの仕事だけど…と思って。子連れで出かけたある日、何回すいません!って外で謝っただろうって悲しくなった。子どもを産むって悪いこと?って、悔しくもなった。そういう体験も原動力となりました。

—なるほど。子育て中に体験した悔しさや悲しさ、すべてが原動力となったのですね。

はい。それで2018年にOPENしました。資本金は全然なくて銀行から創業融資を受けたり、クラウドファンディングをして集めました。今は、活動を支援してくださる個人や企業さんから毎月千円~5万円ほど資金を出してもらうサポーター制度で施設運営は様々な方に助けられています。民間施設なので、利用者様には施設利用料をお支払いいただいています。

誰かを抱きしめることはチャットGTPにはできない。

—立ち上げて6年経って7期目です。どんなことが課題ですか?

お母さんの役に立っている自負はあります。でもたった6,7年の間に経済的環境が大きく変わったうえ、AIの進化がすごい。SNSでつながるというレベルではなく、人には相談しなくなった。チャットGPTに相談すれば解決できてしまう。このままだと人に相談する価値とは何だろう?って、チャットGPTは脅威。チャットGPTは励まし、提案もする。絵文字まで送ってくる。人間みたいに噂話をせず、ビッグデータを元に回答する。すごく落ち込んでいる時に励まして!といえば、全部プラスの言葉に変換して言葉をくれる。

—人智を越える?怖い!カウンセラーが仕事を失う?あるいは小説もチャットGPT使って書く人もいるらしいので。賞を取るために傾向と対策のもと書いたとしても、書き続けるには難しいでしょうね。書きたいことを書くのが小説だと思うし(笑)

紙一重ですね。カウンセリングは自分で治癒できる人はチャットGPTにもっていかれるかもしれません。小説とか、教育や保育、介護など人の手が必要な領域です。この先10年経ったら彼氏はチャットGTPの中にいますみたいなのが出るかもしれない。なんでも生成できるので。

—SNSでもよく見かけますよね。はやり顔なのか似たような顔。あれはチャットGTPが生成?モデルのオーディションとか要らなくなってしまいそう。

一発で分かりますよね。でもチャットGTPは人の心は動かせない。最終的に生身の人間に価値がある。子育てに関しても、孤独を感じるとSNSにつながって、コミュニティが生まれます。結-Yui-でママたちのオフ会を開催など、リアルを求める前段階でSNSはあった。それがチャットGTPに代わりそうな予感。子育ての相談を友達にではなく、チャットGTPにする。LINEでAIトークできる。「人とつながる」という求められ方が、ちょっと違ってくる。居場所の役割も変わってくるのかな?と思います。

—LINE AIから例えば「きょうの晩御飯の献立は?」と聞くと、おお、ほんとだ。和食、洋食、中華……いろいろ提案してくれますね。

冷蔵庫にある「豚肉、ネギ、卵を使って和食をお勧めして」とすれば、それに従って提示する。今の若いままたちはレシピ検索もクックパッドよりチャットGTPです。

—ビックリ!便利だけど、矛盾もない。生き物ではないロボットですもんね。

この6,7年のAI進化で変わったこともありますが、変わらないことはお母さんの悩み。これはずっと普遍です。赤ちゃんはAIには触れない。どの時代に生まれても赤ちゃんは赤ちゃん。子育てする環境は大きく進化しています。例えば、ベビーカーや液体ミルク、お尻ふきを温めるウォーマーなどのツール。機能が充実しても、生まれてくる赤ちゃんそのものは変わらない。ゼロから親子で育っていく。6年たくさんの親子を見てきて、どの時代でも悩みは同じだと感じます。AIに赤ちゃんを抱きしめたりできない。結-Yui-では、いらっしゃい!元気でした?ってお母さんを抱きしめちゃう。言葉はいらない。それで泣かれちゃうと私も泣く。そこが結-Yui-の良さ。お母さんは誰かに褒められたい。がんばっているね!って。社会の目が厳しくて気を張っているので。

—私は産後2か月で職場復帰しなくちゃならなかった時代でした。で、経済的にしっかりしないとならなかったので気を張っていて当時ハリネズミみたいでした(笑)。シングルマザーでしたが、たくさんの人に支えてもらってきたんです。「ひとり親だから***なんだ」という偏見にすごく腹が立って。絶対そんな風潮を覆そうと武装してました。

令和の時代も同じです。周囲でも離婚している人は結構います。離婚しました!って来るママもいます。フルタイム勤務になると、結-Yui-になかなか来られなくなるので月に一回、子連れ専用の居酒屋営業に来てくれます。女性の地位ってまだまだ低い。国会を見てもそう。フィンランドの国会は女性の人数が圧倒的に多いです。日本ももっと女性が意思決定の場に多く参加できるといいと思います。


娘の不登校経験をカミングアウトし、大きな反響を得た。

—ご自身のお子さんも不登校経験されたとか。不登校・引きこもり全国1の横須賀市に、どんな想いがありますか?

不登校経験あることはオープンにしています。子どもにも夫にも相談した上でカミングアウトして、救われた人がたくさんいた。私はニコニコして怒らないと勘違いされていたようですが、聖母マリアじゃないし泣くし怒ります(笑)。「にげて さがして」というヨシタケシンスケさんの絵本を娘に贈ったことをnoteに書いたら、何回も読んでいるとすごく反響をもらった。私がオープンにすることで信頼感が増すと言うお客さんもいた。

これは2022年の暗黒期に書いたものです。「自分を変えるために動いてもいいし、自分を変えないために動いてもいい」という言葉に救われた。学校でしか得られないこともあるけれど、行かないことで得られることもある。そこにこだわらなくていい。逃げてもいいって。私も最初は娘を学校へ行かせようとしてしまいました。思春期外来のあるクリニックに親子でカウンセリングへ行った時に「お母さん、今、人生何年時代ですか?」と聞かれて「100年時代です」と答えたら、「100年のうちの3年学校に行っていないくらいで何ですか?家が一番居心地のいい場所にすることが一番大切。学校に行っていないことに捕らわれることはない」と言われて私のブロックが外れた。

—早い段階で、良い医師にアドバイスをもらえてよかったですね。

カウンセリングの先生曰く「不登校は弱いと言われますが、そうじゃない。学校行きたくないと自分で選択している強さがある」と。行きたくないのに病みながら行く子より、よほどいい。自分の意見を持っている子は、今の義務教育に合わないかも、と思った。

卒園した幼稚園の園長先生に話しに行ったら「子どもの力を信じて見守る。親にできることはそれだけ」と言われて、私も救われた。彼女の立ち上がる力を信じようと、いろんな大人たちにきっかけをもらいながら変わっていった。中3の時には知り合いの方にオーストラリアへ冒険旅行に連れて行ってもらい、2か月間ジープでオーストラリア周遊キャンプの旅。現状をちょっと離れたほうがいいかなと。その体験を経て、大きく成長して帰ってきました。

—貴重な体験。子育ては赤ちゃんの頃だけではなく、思春期こそ大人の機智が必要ですね。

私は子育て中モヤモヤした体験から、「同じ轍を踏ませたくない」という想いが大きい。今は2歳くらいからプレ保育園に入れるママが多い。ママは週2くらい自由な時間が手に入る。そうすると当事者だった頃は泣いていても、喉元過ぎればなんとやらで「今だけよ。すぐ楽になるから」って、どこかのおばちゃんと同じようなことを言う。今だけだからがんばって!と。自分が言われた時しんどかったはずが忘れてしまう。たった2,3年だから懐かしい、いい思い出に変換されてしまう。だから誰も一番大変な時期の子育て支援をやらないのか!と思った。

—なるほど。乳児期は親子関係の土台になりますね。それで居場所をつくることに?

どうしても母から罪悪感が抜けず、自分のためにこの子を預けるなんて!と感じている人がまだまだ多い。そんなママのリハビリ。手を放してみて、自分でなくても大丈夫だと知ってもらえれば。それで一時預かりと親子カフェをやっています。

—では最後に座右の銘があったら教えてください。

「本質的な失敗は挑戦しないこと」です。無償で、発展途上国で医療従事しているジャパンハートの医師、吉岡先生の言葉です。子どもたちにも常にそれを伝えています。この先も変わらず子育てを頑張るママのよりどこでありたいと思っています。時代は変わってもママの抱える課題は変わらないので。アクションしないことは、一番の失敗ですから。

—ありがとうございました。


◆結-Yui-の情報

baby&tot place 結-Yui-
室内あそび場と
一時預かりサービスを提供する
親子のためのサードプレイス

Coska Bayside Stores 1F
横須賀市本町2-1-12

詳細はこちら

mam&kids salon 結-Yui-
室内あそび場と親子カフェ
一時預かりサービスを提供する
親子サロン

横須賀市鴨居3-5-3

詳細はこちら


とっても朗らかでパワフルな由美さん!ICレコーダーを止めてからも楽しいおしゃべり止まず。由美さんには重い障がいをもつご家族がいらして、幼い頃から周囲の偏見と闘ってきたというお話に、胸がジンと熱くなりました。人の痛みを知っているからこそ、一筋の光となれる。そうした原体験を笑顔で話せることが素敵だな~とじんわり。今度、居酒屋営業のお手伝いに伺いますから続きをおしゃべりましょ~!
(2025年6月取材・執筆/マザールあべみちこ)

取材の一部を音源データでご紹介します