みんキチVol.18│3人の育児と、アート活動で表現できる、親子が遊べる場づくりに努める。


アトリエ「ぶんぶん」主宰
志田文野(しだ・あやの)さん


1984年生まれ。神戸市出身。多摩美術大学卒業後、3人の子育てをしながら絵を描く。2020年に横須賀へ移住。2022年より工作や絵画教室のワークショップを手掛け、2023年より自宅アトリエ「ぶんぶん」を始める。上手い下手では無く、好きなように表現するための場所。子どもが表現したくなった時に自分で来られる場所。保護者が安心して、週末に子どもと遊びに来られる場でありたいという気持ちで運営している。

あやのさんとは4月末開催された「浦賀魔女の日前夜祭」でご一緒した仲間。当日は会場も別々でご挨拶だけでしたが、言葉数こそ少ないけれど不思議な雰囲気のある人だな~!という第一印象。アトリエ「ぶんぶん」は私が通う図工教室「ず」と同じように大人も子どももアートを介して遊んで弾ける場を主宰されてます。魔女イベントの反省会という名目で打ち上げをした5月に再会し、ようやくゆっくりおしゃべりすることができました。2歳違い(中2・小6・小4)3人のお子さんを育てる一方、自宅兼アトリエ「ぶんぶん」を開講。偶然ですが私も「ぶんぶん」という名の文章講座を『みんなのKICHI』で開講予定。あやのさんにとって、アトリエ「ぶんぶん」とは?ママでありアーティストでもある素顔に迫ってみました。(取材日のICレコーダーが不具合で飛んで、散策しながらの二度目取材となりました)

美大卒業後、社会人経験なく子育てに奔走。

—浦賀のご自宅でアトリエ「ぶんぶん」をされています。私が通う馬堀海岸の図工教室「ず」と似ていますが、始められたのは何がきっかけで?

最初は北久里浜の英語教室のオーナーさんに「アート講師をやってみないか」と声を掛けてもらいまして。それまで、絵は趣味でも仕事でも描いていましたが、工作を人に教えたことはなかったのです。そこで月1回アートクラスを担当させていただきました。

同じ頃、小学校高学年の娘さんがいる友達から「絵を描くのが好きだから教えてほしい」と頼まれて。自宅のアトリエに月2回ほど来てもらい、私も子どもと一緒に絵を描いていました。元々、絵を描くことは大好きですが、誰かと共に描くのはもっと好き。だから今も参加人数が少ない時は、私も一緒に描いています。

—クチコミで通ってくる親子が増えていったのですね。「ぶんぶん」は、主に絵を描く教室ですか?

私から子どもたちへ、絵の相談をすることもたくさんあります。諸事情があって英会話教室のアートクラスが一年ほどで終わってしまいましたが、個別で連絡をくれた方から「おうちでアトリエをやっているのなら行きたい」とご希望いただいて。そこから、保護者と子どもが一緒に来れる「えのぐ遊びクラス」も始まり、月2回の週末(土・日)という形になりました。)

—とてもセンスがいい!大学卒業して、すぐご結婚されて子育てを?

いわゆる会社勤めをしたことはないのですが、卒業後は美術予備校の講師、絵を描く仕事もしていました。第一子が生まれてからは家庭保育室に子どもを預けて、近所のスーパーやNPOのチラシをデザインしたりしていました。そのNPOが発行する会報誌に年に4回、子どもとの暮らしをテーマにした4コマ漫画を描かせてもらっています。
今も平日はアトリエ以外の場所で働いています。自分の子育てが大変だったので、小さな子どもを抱えているお母さんを見ると、つい応援したくなります。

—つくるパワーが備わっているせいか、日常ネタの4コマ漫画もおもしろい。アトリエ「ぶんぶん」の定期開催日と、対象者を教えてください。

毎月第1・第3の土日で、月4日開催しています。だいたい11時から15時半まで。さくっと描いて帰っても良し、お昼ご飯を持ってきて、お昼休憩挟んで長くいても良し。そこは参加者の自由意思に任せています。 習い事や家庭の用事で遅れてきたり早く帰ったり、自由です。材料用意の関係で、予約していただけるとありがたいのですが。高学年から中学生くらいの子ども本人から、「今日行くね!」と当日朝とかに連絡が来ると、急だけど嬉しくなっちゃいます。描きたくなったんだな~って。 描きたいなと思った時に、声をかけてもらえることが何よりも嬉しい。

子どもが自分のお小遣いで参加できるアトリエを目指す。

—ゆるく制限をあまりせずにっていうのもいいですね。なんか図書館みたいな感じで

そうです。小さい子がいると「朝早く行かなくちゃ」ってなるのはしんどいし。私が2人目と3人目を出産した立川市の「まんまる助産院」では『お産の学校』というのをやっていた。自然分娩ができる体を自分でつくりましょうという考えで、そこに行くのが楽しかった。お灸や、自分の体のマッサージの仕方とか、アートクラスやアフリカンダンスのクラスもありました。そういう場所がいいなと思った。子連れで安心して来てもらえる場所を作りたいという想いは、ずっと自分の中にあった。

—なるほど。「まんまる助産院」が想いのスタートになったということですね?

はい。そこに憧れて。助産院を選ぶ人も、考えをもっている人が多くて。入院中作ってくれるご飯もおいしかった。それも憧れていて。アートに限らずいろいろ取り組んでいて、サンダルのワークショップも開催しました。私が「マンサンダル」を履いていたら、アトリエに来ている人からそれは何?と聞かれて。それでアトリエ「ぶんぶん」で開催することに。なるべく通い続けられる値段で、こういう場所があったらいいなと。

—今はお月謝制ですか?

今は単発ごとに参加費1回1500円プラス材料費です。1500円の時もあれば2000円の時もある。いろんなご家庭があるので、子どもが自分のお小遣いで来られる価格帯を目指しています。テーマは毎回決めていますが、用意したモチーフを誰も描かない日もあります(笑)でもそれで良い。材料を用意して、こういうのどう?って聞きますが、これを作りなさいっていうことは絶対無いです。もちろん、やり方や描き方を聞かれたら一緒に考えますが。黙々と描く日も、歌いながら描く日も、どっちもあります。

母として一人で子ども3人育てる。

—子どもたちがどんな道に進んでほしいとかありますか?

子どもって神様からお預かりしているのだと思います。ちょっと前になりますが映画「かみさまとの約束」という作品を観て、胎内記憶がテーマでしたが、そこで子どもが言ったセリフが強く残っています。『好きなことをするために、お母さんのお腹を目指して生まれてきた』っていう。そうか。何で生きているのかって、好きなことをするためなんだって。そう考えると、子どもたちがそれぞれ好きなことを見つけて、できればいいなと思っています。

—3人の子どもたちを孤軍奮闘で育ててきたということですが?

色々と事情はありますが、ずっとワンオペ育児をしてきました。でも外遊びは絶対してほしくて、一人で頑張って連れ出して月曜日はクタクタで……。何で一人でこんなに頑張らなきゃいけないの!と勝手にイライラ。子どもにとっては意味不明だったと思います(笑) 。一人目の時は特に、一対一でいるのが辛くて、家庭的保育室で預かってもらっていました。

その時に、育児4コマ漫画を描き始めました。子どもが言ったこと、自分がイライラしてしまったことも、客観視するとおもしろく受け止められたし、描くことで救われました。とにかく自分が笑っていられるように。ご飯や掃除は行き届かなくても、好きなことをする。子どものために我慢するより、好きなことをさせてくれてありがとうって伝える。ママが笑顔だと子どもは絶対うれしいと信じています。なので「ぶんぶん」も、 子連れで週末出かける先の選択肢の一つに入れてもらえるとうれしいです。

—横須賀市が不登校・引きこもり全国1という問題は、どのように思われますか。

私の娘は少しの期間、学校に行けない時期がありました。その時にずっと家にいる娘を見てきて、学校でなくても、朝起きて顔を洗って服を着替えて、外に出る。人と話すことって、とても大事だと感じました。その時、不登校の子どもが昼間行けるところを一緒に探したのですが、学習支援はあっても、横須賀には絵を描ける場所が無いと気づきました。なので、今の目標は、 そういう場を作ること。何万年も前から歌い、踊って、絵を描いてきた人類ですから、そこはとても大事だと思っています。

—好きなだけ家にいていいって考え方もあるでしょうけれど、家では得られない何かを求める時期が子どもにはあるからね。ところでアトリエ運営以外にお仕事はされていますか??

平日は違うお仕事をしています。でもどこかで繋がっていると感じています。働くこと、家事、子育てという生活の中で生まれるものが創作だと思っているので、ずっと働きたいです。

—ありがとうございました。


あやのちゃんとお子様3人、4人きょうだいみたいでかわいかったぁ。持ち物や佇まいがかっちょ良く。この後みんキチでご紹介する作文堂の大竹先生にお引き合わせくださったご縁も感謝です。何かを聞くと、適当な言葉で誤魔化さず、考えながら自分の言葉を絞り出してくれるのがうれしかったです。今度は何か作りながら、ゆっくり話しましょう!
(2025年6月取材・執筆/マザールあべみちこ)

取材の一部を音源データでご紹介します