みんキチVol.04│横須賀市をより良くしていくために、市議会議員と草の根活動どちらも取り組む。


子育てパパ38才、横須賀市議会議員
堀りょういちさん

公式HP https://horiryoichi.net/
YouTube https://www.youtube.com/@ryoichi_hori
1986年生まれ、神奈川県横須賀市出身。早稲田大学卒業後、(公財)松下政経塾に31期生として入塾。主に児童虐待対策や教育のあり方について、現地現場を通して研究。その後、アクセンチュア株式会社を経て、自殺問題の解決のためNPO法人自殺対策支援センターライフリンクにて深刻な悩みを抱えている人の相談や支援に従事。2019年に横須賀市議会議員に初当選。子どもの自由な遊び場をつくる「よこすかプレーパーク」の共同代表

今回取材している中で、保育園や学校での問題を相談できる所はどこかにあるか?を探してみたところ「子育て目安箱」(※詳細は記事末尾で補足しています)というオンライン相談窓口に行き着きました。掲げているのは横須賀市議会議員の堀りょういちさん。ご自身が子育て真っ最中ということもあり、子育て支援施策に積極的に取り組まれています。そのうえ子どもたちの感性と想像力を育む冒険遊び場「よこすかプレーパーク」の共同代表であることを知り、堀さんにお話をお聞きしたい!と切望。なぜ二足の草鞋を履いて議員とプレーパークの活動に携わっていらっしゃるのか。学校教育に必要だと思うこと。不登校・ひきこもり支援対策についてなど、地元育ちで子育てパパとして奔走する堀さんに、今の横須賀市が抱える課題についてお聞きしました。

横須賀の野山で自由に遊べるプレーパークを月1開催。

—横須賀市議会議員をされながらプレーパークの活動も取り組まれていますね。何がきっかけで始められたのですか?

横須賀には海と山がある。自然豊かな環境が全然活用されておらず、子どもの遊び場として整備されていないもどかしさがありました。野山を駆け回ることがなくなってしまったけれど今の時代にこそ必要だと思います。教育として自然に接する機会をあえてつくりたい。子どもの野外活動をしたいと思っていたところ、2015年頃までプレーパークの活動をしていた団体から継続が難しくなったので引き継いでほしいという話がありました。残ったメンバーと新メンバーを加えて新たにやりましょうとなった。

—なるほど。母体が既にあったのですね。海と山を探検できる素敵な活動ですよね。

手弁当の活動で月に一回開催で何とか続けています。もっと情報発信していきたいのですが時間とお金の関係で……できる範囲で活動している現状です。

—月1活動の情報発信方法は?どんな年齢層の子が参加しますか?

主にInstagramやチラシで告知しています。対象年齢は区切っておらず、未就学児から中学生くらいまで。異年齢ごちゃまぜで遊ぶのもいいなと。土曜開催で時間帯は10時~14時。いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。お昼は自分で持ってきてもらいます。今のところ保護者同伴で、プレリーダーが子どもたちとの遊びを積極的に関わっています。遊ぶ内容も、子どもたちがやりたいということを優先。じゃあどうやってやろうか?という感じで大人がサポート。穴をひたすら掘りたい子、山を登りたい子、火をおこしたい子、金づちやノコギリを使って工作したい子など、いろいろです。基本なんでも自由にできます。ただ、ケガは自分持ちだよと言い聞かせて遊びます。

—素晴らしい。保育園の園庭ですら、あれダメこれダメとNG事項が多すぎて(笑)自由に遊べない環境。命にかかわるようなことはもちろん止めないといけませんが。転んで擦りむいたくらいで神経質になることはないんですけれどね。

ケガを絶対にさせたくないという圧が今はすごい。コロナ禍で加速した。衛生面とかも非常に敏感になりすぎているのではないかと思うこともある。意見が分かれるのでどっちが正解というわけではありませんが、小さいうちに汚いものを触り、服を汚す体験は大切ではないか。
将来自分も大人になって、子どものおむつを替え、排水溝に手を突っ込んで洗う。それを汚いと言っていたら何もできません。人間はきれいな面だけでなく、汚いドロドロした見たくない面もある。そういうことも真正面から受け止められる力をちゃんと教えないとだめだと思うんです。

—堀さんは市議会議員ですし、一般市民が市民活動をするのと少しポジション的に違うかもしれませんが、活動する上で改善したいことはありますか?

たくさんあります。例えば不登校対策って横須賀市は全然進んでいない。ずっと教育委員会にかけあってきて、ようやく方向性を出すというところまできました。市内の不登校児童・生徒は1,000人を越えていると言われていますが、氷山の一角です。この子たちの支援をどうするのか?が急務です。

子育て、教育、不登校児支援……問題山積の市政。

—この8年ほどで市内に支援団体が急速に増えたと聞いています。大人のひきこもりは3,500人ほどいると聞きました。

確かに支援団体は増えましたが、1団体で見られる不登校児はせいぜい10人とか20人。そもそも存在が認知されていない。遠くて通いきれない子もいます。僕は親への支援も大切だと思っています。不登校児の親も忙しく、疲弊していますので。

—みんキチvol.2登場した小林さんから「当事者の親はパワーがない」とお聞きしました。私は、保護者が伝える術を身につけてほしいと思っています。NPOをつくったり、学校に支援室を用意したり。不登校児支援には何が必要でしょう?

何か一つだけで解決できる問題ではありません。まず学校が子どもたちにとって魅力のある場所にしなければならない。不登校の理由はいろいろあると思いますが、シンプルに学校が面白くない。今は他の選択肢もあるし、ネットには情報が溢れています。子どもにとって学校へ行くことだけが正解ではない。学校という枠内に納まりきれない子が増えています。クラスの40人一斉に先生の指示を待って何かをするなんて時代的に遅れています。オフィスでさえ席をなくしてフリーアドレス化したりしています。学校だけ旧態然として変わっていない。これじゃあ行きたくなくなるよ、と思います。

—海外にあるホームスクールを日本でも…ですが、信念もって引っ張っていける親がどれだけいるかな?と。親も学校という枠の中で育ってきているので固定概念から抜け出せない人もいる。正解・不正解の視点しかないと追い詰められちゃいます。子どもの希望に従うというよりも、子どもがどうしたら伸びるか?をよく観察するのが親の役目なんじゃないかと。

親はいつの間にか親になる。子どもを育てるスキルや知識は誰からも教わっていないのに、子どもが産まれた瞬間から親にならないといけない。わからない自分が責任を取らないといけない、という。

不登校児の親の多くは、まじめで責任感が強い方も少なくないと思っています。情報は錯そうして不登校について調べるたびに親が傷ついてストレスを抱えてしまう。だからこそネット上の話よりリアルな声を聴くことができれば、力になると思います。

—よこすかプレーパークが他とは違うと胸を張れる点教えてください。

市内に同じ活動はない唯一性です。できれば月一回でなく、いつ行ってもあるという環境にしたい。川崎には「川崎市子どもゆめパーク」という常設のプレーパークがあります。そこは不登校児のフリースペースとセットになっています。そういう場所が理想です。主宰は川崎市が委託して運営しているNPOです。

—映画になった「ゆめぱのじかん」で以前観たことがあります。

子どもの権利条約に沿って川崎市が条例を作って、そこを体現する形で実現しました。もともと工場で廃業した跡地につくられた。同じように横須賀市にもつくりたいのですが、今は遊牧民みたいに点々と動きながら活動しています。拠点型にすれば親も子も来やすいです。

「社会に変化を求めるなら、自ら行動せよ」というガンジーの教え。

—今の教育に必要なことは、どんなことだとお考えですか?

僕は小2から小6まですごく虐められっ子でした。1年間、誰とも口をきいてもらえなかったこともあります。当時の親分みたいな子に嫌われて、机に花瓶を置かれ、机の中もゴミ箱扱い。先生は気づいていなかったし、僕もSOSは出しませんでした。近所に住む年上のお兄ちゃんがとっても仲良くしてくれて大切にしてくれた。だから別にあの子たちにそんなふうにされてもいいかなって達観できた。人ってだれか信頼できる人が一人でもいれば、それで生き続けられるし。自分の中の人に対する基本的な信頼感。何が幸せなのかはその人次第ですが、一番基本はそういうことかなと思っています。

僕は前職4~5年ほど自殺対策のNPOスタッフで24時間電話対応も経験して、改めてそういうことの大事さを感じています。当時は僕を含めて4-5人しか正社員がいなかった。代表の清水さんと一緒に国会へ行って陳情したり、計画を作ったり、目の前にいる方の相談に乗ったり、あらゆる仕事に奔走していました。ほんとうに大変な時、誰かを頼ること。最低限それは伝えていきたい。だからSOSを出す教育も大切です。

—なるほど。SOSを発することは大人になっても大切ですよね。座右の銘は?

僕はガンジーが好きで、彼の言葉に「世の中に不満があるなら自分が変化になりなさい」という教えがあります。僕は不平不満をあまり言いたくない。これは自分に対する言葉として常に意識しています。

—まさに体現されていますね。私は横須賀のこと、まだわからなくて。この先のビジョンは?

子どもの遊び場を充実させたい。プレーパークだけでなく屋内の遊び場も。1歳になって外遊びできる子から、中学入学時期くらいの子の遊び場が圧倒的に少ない。そうした遊び場問題です。

そして横須賀を教育移住してもらえる街にしたい。こういうことがしたいから横須賀に来ました、というような。そのために特色ある教育を全面に打ち出して、それを必要とする保護者が市外から集まる街にしたい。国際色が豊かなのでそういう面も打ち出せますし、自然をいかしても。葉山と横須賀の境の湘南国際にインターナショナルスクールもできます。

—私は書き手ですが、クリエイターをもっと活用してほしいです。発想や表現がなければ人は豊かになれない。「みんなのKICHI」はsmall library、small gallery、small spaceという場所にします。横須賀美術館のエキスを分けてもらい、自由で小さな居場所にするつもりです。

市内でも複数フリースペース、フリースクールがありますが、ほとんど月謝制です。文化・芸術に特化したフリースペース、フリースクールですと打ち出すのもアリです。

横須賀には生涯学習の市民大学というのがありますが高齢者向けのコンテンツばかりです。例えばクリエイター集団をつくってそうしたところに行けば会えるとか、連続講座を開講するとか、学校へ行けない子どもたちの受け皿として開放とか。いろいろな可能性があると思っています。

—ほんといろいろなことをご存じで、すごく勉強になりました。最後に何か堀さんからこれだけは!ということがあればどうぞ。

僕は祖父が医師で、医者になろうと思って勉強をしてきました。でも病気を治すのが医者なら、そもそも病気にならない社会にしたいと思って政治を志し、市議会議員を務めています。歪んだ世の中を良くしていきたい。僕と同じ無所属の市議会議員で会派を作っています。数がものをいうので、同士で同盟を組んで活動しています。

※「よこすか子育て目安箱」は、横須賀市で子育て中の方が市政に対するモヤモヤを投稿できるオンラインフォームです。
・公園の遊具がいつまで経っても直らない。
・学校の先生の対応がひどい。
・あの紙、電子化できないの?
などなどーー。匿名でもご投稿いただけます。
ぜひお気軽にお声をお寄せください!こちら→子育て目安箱

—応援しています!ありがとうございました。


若くて、熱意があって、理路整然とお話しされる堀さん。次年度はPTA会長を引き受けられたとか。何事も全力投球で素晴らしい。横須賀市の細かな環境も把握されていて勉強になりました。この地の歴史を知っているからこそ未来を語れる。前向きなお話は楽しく、明日からもがんばろう!という気持ちになりました。これからの活動も楽しみにしています。
(2025年1月取材・執筆/マザールあべみちこ)

取材の一部を音源データでご紹介します