清水さんの主宰される「ゆめこびと」は20年もサークルとして継続してらっしゃいますよね。それってすごいことだと改めて敬意を払ってしまいますが、20年前の子育て環境はどんなでしたか? |
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当時は子育て中の母が集う場が無くて、それぞれが悶々としていたんですね。そんな時、1990年に横浜で「子連れマップの会」という子育て中の親が中心となって集まる会が港北区であるという記事が、朝日新聞の片隅の小さな情報で掲載されていたんです。それを見て、もういてもたってもいられずに当時3才と7ヵ月の2人の娘を連れて藤沢市から飛んで行きました。そうしたら、たまたまそこで藤沢市在住の仲間3人と出会いまして、皆同じように「何かがやりたい」という気持ちを抱いていました。そこで手始めに91年、伊藤エイミーさんというピアニストをお呼びして、子連れで参加できるクラシックコンサートを主催しました。それがとても好評を博しました。でも、主催者は裏方ですから本当は私達が聞きたかったのに、ゆっくり聞けなかったのですけれど(笑)。
それで、「イベントもいいけれど、もっと地道に続けていけることを」と考えて「ゆめこびと」という地域情報紙を年3〜4回発行することにしました。まだパソコンが無い時代、ワープロ時代に切り貼りしながら手作り感たっぷりで。子連れで取材し、広告は一切載せない、有名無名関係なく会いたい人に会いに行く。そんなルールはずっと守り続けてきました。紙媒体にこだわりをもってきましたが、時代と共に情報のあり方も変化し、2006年に50号目を最後に休刊しました。藤沢市では子育て応援メッセという取り組みで関わって7年目になります。 |
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有名無名関係なく、会いたい人に会いに・・・・・・という点は、このKAKERUインタビューも同じです。20年活動を続けていらっしゃる中で、ママのライフスタイルも変化を遂げました。インターネットやパソコン、メールというツールは私がママユニットを立ち上げた2001年頃まさに時代の先端でしたが、それから何年もしないうちに携帯にシフト。携帯がないと仲間とつながれないほどになりました。清水さんは先輩ママですが、どんな社会になるとよいと思われますか。 |
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私自身、子育て中に悶々として悩んでいた時に同じ気持ちの仲間と出会って支えられてきました。自分の子が育つには、周りのコミュニティが豊かにならないと育たないということに気づいたんです。他人の子でも、自分の子と同じくらいかわいいと思える経験を「ゆめこびと」の活動でできました。いろんな人とつながっていることを子どもに見せることもできた。
実は私、ジャーナリスト志望で自分の書いたもので社会を変えたい、とかつて考えたことも。就職当時は、女性が活躍できる場が限られていたんですね。学生時代はもっと活躍していたはずなのに(笑)。子どもを産んでもっと女性の負担を感じて、挫折感すら味わった。どん底に落ちて這い上がろうと思ううちに、本当に変えなければならないのは社会ではなく、自分自身なのではないか。自分がどう生きるのか、どう在りたいのかを問い直すことであり、それは子育て期にこそできることなのではないか・・・・・と思うようになりました。
自分が好きでやっていることは楽しいし、たとえお金という対価が得られなくても、大事だと思ったことをやり続けることにこだわりをもちたいと。そういうことを大切にする人が増えていくといいなと思っています。 |
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その思いに、とても共感します。私の場合、バカバカしいことこそ大事にするっていうのを鉄則にしています(笑)。昔、広告会社に勤めていた頃、知名度の高いブランドの広告企画に参加できるようになって勘違いしていたことがありました。自分が作る広告が話題になるのがうれしくてしょうがなくって。でも、子どもを産んで育てているうちに、やりたいことが現状の広告ではないことに気づいてしまった。もしかしたら母となってから何かしたい人は、お金という価値ではなくて、自分を燃やせる仕事、役割がほしいのかも。 |
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私は長いこと、なんとなく自分が好きになれなかったんです。高校も大学も推薦で進学した、いわゆる優等生タイプ。周りに期待されている自分がどうしても受け入れられなかった。他人からの評価を生きる自分は、ありのままの自分ではなかったのです。子どもには私自身を育て直してもらったように思います。
目の前の子どもは自分を映し出す鏡のような存在です。だから、ありがとうと感謝しています。「ゆめこびと」の活動を通して、いろいろしながら自分で自分を好きになれた。親は「こうでないとダメ」って子どもに条件を出したがりますが、子どもは親を条件なしで受け入れてくれる。そうやって子どもや仲間に支えられてきただけに、私も次の人を支えられたらと思ったのです。
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なるほど。今日の子育て支援活動、少し見学させていただきましたが、0歳児から3歳くらいのお子さんを育てている地域のママが輪になって話しができて、目が届くところで子どもたちがヨチヨチ遊んで。イベント的な派手な催しでないのに、なかなか素敵な集いですよね。 |
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「おしゃべりサロン」という名にしてから、敷居が低くなって参加しやすくなったのかもしれません。サロンに通ううちに二人目を産んでいる人も多いです。自分が誰かに支えられていると思うと、やがて自分も人を支えたくなる。今は、大変なことがあっても気楽に「助けて!」と言えないママが多くなってきているようです。弱みやSOSを言えなくても、関係構築ができると少しずつママも変わっていく。
昔も、公園に行くとエッ?て思う親はいたけれど、今はもっとナーバスな親同士の関係で、当たり障りなく自分を出さないようになっています。人間関係の練習をする場が失われている。個人情報を公開できなくなったのは、人とつながることを避けることにもなってしまう。親が人との関係で擦り傷をつくらないから、子どもも揉めることに慣れない。たとえ痛んでも「痛かったね」と共感する人がいれば立ち直れると思います。それができる場が「おしゃべりサロン」です。 |
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人間関係の練習場、という捉え方もすごく共感します。人と触れ合うというのは、一生練習ですよね。それに、これだけ顔の見えないネットが発達してしまうと、直接の関係が大事だと思います。 |
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「おしゃべりサロン」はいわゆるグループ相談で、「男女共同参画センター横浜」が取り組むピアサポート事業(当事者による支援事業)の一環です。同じ悩みを持つ人とつながって交流を通じて子育て世代を支えようという試みです。電話でもネットでもなく、1対1の関係でなく、参加者同士お互いのメリットになる。きっかけさえあれば、仲良くなれるし、自分の中にある答えを自分で探しあてることができる。もっとも子育てに関しては、深刻なケースも増えていますから、ただお話しを聞いて共感するだけでは本当の支援ではないこともあります。具体的ケースでいうと発達障害を抱えているお子さんの場合、これは専門家と一緒に支援をしていくことですね。 |
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円座になって話をするというのは、お互いの知恵を出し合うということができますよね。複数の見方もできますし。私もいろいろなイベントや講演で質問される内容でよくあるのが、例えば「うちの子には、どんな絵本を読めばいいか?」と常に模範解答を求めている気がします。絵本選びにしても、外遊びにしても、そうですけれど、我が家流・自分流があっていい。時間を掛けながら私はこうなんだと見つけられるといいのですけれど。 |
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親も子も、その人らしさを発揮できるといいですね。情報が錯綜する中、皆さん、いろいろな不安を抱えて子育てをしています。でも、悩んだり迷ったりするのは当たり前。子どもが1歳なら親だって親年齢1年生です。
私は、「ノーバディーズ・パーフェクト(完璧な親なんていない)」という参加者中心の話し合いプログラムでいろいろなお母さんたちと関わる機会がありますが、「よく頑張っているね」「今のあなたでOK!」といってもらえる関係性があれば、お母さんたちは自分を肯定でき、自信を持ち、自分の中にある答えにOKが出せるようになると実感しています。
人とのつながりの中で、双方向の関係性の中で子育てをしてほしいですね。ネット時代の今、情報は即時性が求められますが、本当に大切な、必要な情報というのは、人の手を介し、温かみを伴いながら届くのではないか、と私は思います。悩む力は人と出会う力であると信じて、たくさんの出会いを体験してほしいです。
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ありがとうございました。
実は「最後のところ恥ずかしいから削ってね」と清水さんから指摘され、取材記事としては削除してしまった大事なところがあります。……でもやっぱりすごいことだと思うので、あえて私が小耳にはさんだ形で公表させていただいちゃいますが(笑)、清水さんは4月から某大学院生となるそうです。
『子育て支援活動をさらに充実させるために、臨床心理士という資格を取得したい。そのためにもう一度、勉強したい』と、若い受験生に混じって受験勉強をされ、見事合格をされました!勉強が好きということは、可能性がうんと広がるし、人との出会いもたくさん用意をされている。そして、たくさんの人にいい影響を与えてくれるものだと思います。これからも先輩ママとして、そして大学院生として、私たちにいろんなことを教えてください。
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