私が知っているピアニストの中で松田くんは容姿も経歴もとっても異色ですが、音大で勉強したわけではなくてピアノを続けてらしたんですよね。ピアニストになるのは小さな頃からの夢でしたか? |
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母が当時ヤマハの講師をしていたこともあって、5歳からピアノを始めました。といっても、母に教わるようなことはなかったのですが。普通の男子は小学3年生くらいでピアノを辞めてしまうけれど、辞めるタイミングを逸してなぜか続けた。小6の時にタイムカプセルを埋めることになって、そこに入れる自分への手紙にピアニストになると書くのは恥ずかしくて「大人になったら芸術家になっている」と書いたのを覚えています。ピアノが弾けるというのがスポーツできる男子の手前、なんだか恥ずかしかったんですね。それが中学生になってから、バンドやる時に「へぇ、ピアノ弾けるんだ!」と言われるようになって、「あ、やっててよかった」と(笑)。
クラシックピアノを習ってきましたが、ある時それではピアニストとして食べていけない・・・・・・と思い、ジャズの勉強を始めたんです。日大に進学したのは保険みたいなもので、ピアノで食べていけなくなったらサラリーマンになろうという魂胆で。大学の授業はあまり出ず、演奏のバイトに明け暮れていました。就活の頃は、そこそこ月収もあったので、だったらサラリーマンにならずにピアノで食べていこうと。
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おしゃべりも上手だから、どこかの企業で営業マンになっても立派にお勤めできそうです。職業の第一希望はピアニスト、第二希望はサラリーマンって、仕事の質に差がありますけれど。同時に描けるって器用ですね。 |
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学生時代からジャズのライブハウスで演奏をする傍ら、バーテンダーとして接客してきたので。雇い主は、僕は演奏もできて、酔ったお客さんの相手もできるから重宝なわけです。アルバイトなのに「ピアニスト 松田光弘」という名刺も持たせてもらえて、でもピアノを弾くよりもバーテンダーをやっている時間が長い日もあって(笑)。それを少しずつピアノを弾く時間を増やしていくように努めました。酔ったお客さんに「あの唄弾いて」とリクエストに応えて演奏しても、「なんだ、待ってるのに。はやく弾いてくれよ」なんて。BGMなんて聴いちゃいない。だから、悔しい思いもしましたよ。
僕の父は銀行マンだったので、転勤が多くて小学校は3回転校したんです。新しい場所に順応して友達を作るには、相手がどんなことを望んでいるのか知らないとコミュニケーションができない。だから、おしゃべり上手になったのは、子ども時代のそういう経験からの必然性です。
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なるほど、転校生って早く大人になるのかも。私も小2、中2と2度の転校経験がありますので、おっしゃっている意味はよくわかります。ところで今回のアルバム発売以前に、25歳でメジャーデビューされていますよね。これはどういうきっかけでされたのでしょう? |
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デモテープをいろんなレコード会社に送って、送った数の半分くらいからよい返事がありまして。結構簡単にメジャーデビューってできちゃうんだな〜って(笑)。今も活躍中のボーカリストの末永華子さんと2人でユニット「Real
Book」を組んで2004年にコロンビアレコードからデビューしました。今から6年前のことです。ところが、さっぱり売れなかった(笑)。それでユニットを解散してから、埼玉の仲間で新しくロック系バンド「Dragon
Fish Blow」を作りました。今はそのバンドと並行してソロ活動をしています。
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ラッキーでもあると同時にアンラッキーも経験されて、人生早回しのよう。では、松田くんの今回のアルバム「The Record」は何をテーマにした作品ですか。 |
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J−POPをピアノソロで弾くことを極めたアルバムです。80年代、90年代の名曲を僕流のピアノでカバーした作品です。一番最後にオリジナルも入れています。なんとなく懐かしさに浸ってもらいたいという気持ちで作りました。ジャケットもセピアカラーですし。これまでの活動の集大成となる名刺代わりになる一枚が欲しかったというのもありますが、誰もが知っている当時のナンバーを僕流のピアノで奏でていますので、リラックスして楽しんでいただきたいです。
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その、演奏の松田光弘流というのは? |
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テクニックに走ることなく、ピアノが奏でる音色を大事にしたいんです。なんつっても、それほど練習を積み重ねていないので偉そうなことは言えません(笑)。
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カバーしているのが「どんなときも/槇原敬之」「M/PRINCESS PRINCESS」「今夜はブギーバック/小沢健二」「Missing/久保田利伸」などなど、80年代後半から90年代にかけて青春してきた人なら胸に染みる歌ばかり。最後の松田くんのオリジナル「Tokuto-seki」というバラードは、どういう設定をイメージされた作品でしょう。 |
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これは6年前「real-book」の時に作った曲で、歌詞もあるんですよ。学校が舞台になっているんです。好きな女の子が自分の席の斜め三つ前に座っている。その子の横顔が見るのが好きな片思いの男子が、自分の特等席への想いを歌ったものでした。ロマンティックなメロディでしょう。アルバムの最後に入れたのは、to
be continued…まだこの先も続くって感じを伝えたかったんです。
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このKAKERUインタビューの記事が公開される1月15日。夜、渋谷でのアルバム発売記念ライブを皮ぎりに、今年はソロ活動に本腰を入れるわけですね。これから音楽で表現していかれたいことは? |
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ほんの数年前の独身の頃は、ピアノを弾くことって「女の子にもてるための道具」でしたが、2年くらいの間に結婚して、子どもが生まれ、先日もう一人生まれて、自分以外に大事なものが3つも増えた。ピアノを演奏する仕事なら、営業すれば叶いますし、そこそこ食べていける。でも、その「食べていける」ところで留まっていたら、何も生まれない。夜のクラブやバーで演奏をすると、人間の悲喜こもごもが本当によく見えるんですよ。お金を払って演奏を聴きにきてくれているお客さんではないですから、時には嫌な思い、寂しい思いもします。それでも僕は、自分がそういう場で培ってきたピアノをちゃんと聴いてもらえるような音楽に昇華したい。とにかく、今年は一歩前へ踏み出します。応援してください。
【公演日】 2010年1月15日(金)
【時 間】 入替なし ※時間が通常と異なります。
1st:Open 17:30 Start 20:00 〜休憩中にTalk&Liveあり〜
2nd:Start 21:30
【出 演】 mami(vo) 松田光弘(p)
【会 場】 JZ
Brat SOUND OF TOKYO
【料 金】 Music Charge ¥4,200+オーダー 【予約・お問合せ】 JZ
Brat 03-5728-0168
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ありがとうございました。
人生はラッキーなこともアンラッキーなこともありつつ、全部ひっくるめてラッキーなことにつながっている!と信じたいですね。お若くして、お二人のチビちゃんを育てるお父さんでもあり、ピアノの練習時間がなかなか確保できないようですが、まだまだこれからです。カバーだけじゃなくて、オリジナルの曲もいっぱい作ってほしいなぁ〜と願っています。
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