今回のお仕事を通じてHIV感染のことを、たくさん学びました。この冊子を通じて一番メッセージしたかったことはどんなことですか。 |
|
HIV感染者は就労できる立場でありながら、なかなか企業に就労者と受け止められないから今回こうした冊子を制作しました。わかっているだけでHIV感染者は1万5千人います。普段接している人もHIV感染者かもしれません。でも、HIV感染者だからといって、なぜ避けるのでしょうか。今のような不況であっても、法定雇用率で一定の人数の障害者を雇用することは、企業に義務付けられています。障害があっても、病気があっても一緒に働けるような社会をつくる必要があります。
いろいろな人がいるという事実を受けとめられる社会を目指しています。 |
|
HIV感染者が障害者として認定されていることを、知らない人が多いと思います。 |
|
HIV感染者は治療が必要です。しかし、治療をすれば生きていけるのです。みんないろいろなハンディを抱えていると思いますが、HIV感染者には社会的な偏見もあるのではないでしょうか。感染症自体が毛嫌いされている。
だからといって、そのような人たちを排除するだけでは何ら解決ができません。むしろ支えてあげることが必要なのでは。つまり、人を愛し、掬うことです。 |
|
深いテーマです。この冊子では、HIV感染者で元気にバリバリ働く人のインタビューも掲載しています。障害者手帳をお持ちですが、それだけでなく、人としてとても魅力的な方だから企業でも活躍できるように感じました。 |
|
仕事をしないと生活意欲がでない、だから仕事もできなくなる。悪循環に陥ってしまいます。生きていくためには労働しなければならない。経済的な自立と、精神的な安定につながります。 |
|
世界中でHIV感染、エイズの問題はあります。たとえばこの病気に対する欧米と日本の違いは、ございますか。 |
|
アメリカは大統領が所信表明でHIVやエイズについても語ります。世界の三大病「エイズ、マラリア、結核」を減らしていこうという気流がある。一方で日本の首相の所信表明には、HIVやエイズの話題はまったく触れません。軽視しているようにも思います。性感染症の問題は、手をこまねいていられないことなのに、です。 |
|
日本はまだずいぶん意識が薄いのですね。これから、はばたき福祉事業団としてはどのようにHIV感染者に貢献されたいとお考えですか。 |
|
治療が必要な病気なので、これまではウイルスを押えていくための医療に専念してきましたが、これからはHIV感染者の生活はどうなんだろう?と当事者の視点にたって、支援しています。一方でこうした問題は、幼少期からの教育が必要と感じています。
自分の健康を守ること。そして人の健康に危害を与えてはならないこと。自分の健康が大切なのと同じように、人の健康をも考えること。大切な人にHIV感染をさせていいのか、と。そんなふうに本能的に感じる「感性」を育ててほしい。 |
|
家庭での教育が、そうした愛情や感性を育むのかもしれませんね。 |
|
人の育てられ方は、大切なポイントです。
人に大切に育てられると、やはり自分も他人のことを大切にします。それが、
病気への寛容さにもつながるのではないでしょうか。 |
|
寛容さ、というのは今の日本で大人にも欠けています。子どもは大人を映す鏡ですよね。たとえば本が一冊もない家庭では、本好きな子が育たないように。日本の社会は、どんなふうに変わっていくべきでしょうか。 |
|
一言でいうと、「やさしい社会へ」。そうなるためには、家庭間のやさしさが大切でしょうね。人と関わり、つながりをもつことでやさしさは生まれます。また、アメリカも競争社会だったのが、少しずつ変わってきました。突っ張っている、構えていると物事うまく進みません。アメリカでは「ごめんなさい(I'm sorry.)」という言葉をなかなか発しないと言われてきましたが、今は病院内での医療従事者が積極的にいうようになりました。感情を和らげるために使うのです。
ですから、「構えない社会へ」ということでしょうか。会社のイメージ、会社の不利益になると考えて、「人」を見ない企業が多い。HIV感染者で働く意欲のある人はたくさんいます。保身にならず、もっと「人」を見てほしいですね。HIV感染者をどうすれば企業の一員として活用できるか?を考えてほしいのです。 |
|
ありがとうございました。
障害者手帳を持っている方は、目に見えない、外見からだけではわからない障害をお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。ふだんからさまざまなことに偏見をもたず、当事者の立場にたって、もしくは当事者の方とつながって話してみると、自分がいかに「情報」に疎かったのかがわかります。
今回の冊子制作のために、HIV感染者である当事者の方々にも取材をさせていただき、たくさん生きるエネルギーをもらいました。
病気であっても、生きていかないとならない。生きるということは、働くことなんだと。正直に語って頂けて本当にありがとうございました。
私たち一人ひとりがこういう問題を大切にしていけますように。
|
|
|