遠藤さんの体験された9.11とは、ひとことでいうとどんな出来事でしたか。 |
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これは天災ではなく、人災だったことが衝撃でした。人間が企てたことによる割り切れぬ思いと、深い傷を負いました。しかもテロの犠牲になった178カ国の人々に米国が出した死亡証明書には"Murder" 「殺人」と記されたことが事件を一層深く物語っています。
崩壊したWTCビルに隣接して住んでいたレジデントがありました。日本人は私だけで、他はアメリカ人ばかり。テロの前日に出張先のシカゴから夜中にやっとの思いでNYに戻りました。今振り返ればテロ前日の空港も欠航便が相次いであり、異常事態が続いていました。それでも11日は健康診断の予約を入れていたため、どうしてもマンハッタンに戻らなければならず、やっとローカル機に乗り込むことができ、ニューヨーク郊外に夜中に到着。そして、翌朝、疲れが残りながらもやっとの思いで起きあがり支度をはじめました。その直後、外では想像を絶する出来事が起きていたんですね。事件が起こって住居に取り残され、すべてを見ました。
(著書より引用)
「ほんの数分後。耳をつんざくような衝撃音が、うなるように耳に飛び込んできた。と同時に、物凄い揺れが住まいを襲った。一瞬、大地震でも発生したかと思った。爆撃音のような物凄い音とともに、黒煙がゴーッと上がった瞬間、ギャーッと物凄い悲鳴が聞こえてきた。」
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九死に一生を得たのですね。著書にその内容が刻銘に記述されています。9.11を境に、どのような生活となりましたか。 |
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とにかく着のみ着のままで、携帯電話やIDは掴んで避難しましたが命からがらの脱出でした。形とか物、地位、社会的なステータスは何もならない。人の命のはかなさ、一人の人が救う命の尊さ。人が生きることはすごいことだなと感じました。街が復興していく姿を見つめながら、自身が立ち上がる力となると信じました。家族、友達、同僚を亡くした方々と苦しみを共にすることで再び力が湧いてきました。
(著書より引用)
「あれだけのビルが崩れたために、町のここそこに大量の残骸物が散乱している。それを、ひとつ、ひとつ人の手で集めている。飛行機に搭載されていた大量の燃料が燃えたこともあり、かなり危険を伴う作業となっている。不眠不休の消防隊や救助隊。彼らは、自らの命も身体もいとわずに、復旧作業にあたっている。灰にまみれ、疲れ果てて、ベンチで寝ている者もいる。それは、アメリカという国を復興していこうとする、人々の力強い魂の姿でもあった。この国の底力を垣間見た。」
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消防署をまわってボランティア活動をはじめられたのですね。 |
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私は、生かされている、生きている。助けられたこの命は、自分のために使うのではないと。もう一回、この社会のなかにあって、小さなところからでも、自らの真心が捧げられることができればと。9.11では、NYの消防隊員の約1割が、救助のために犠牲になっていました。彼らの救助により、何千人もの人命が救われたのです。残された遺族へのささやかな支援の寄付をはじめ、心を通わすメッセージや子どもたちの絵を添えたお花やお菓子を手渡す活動です。
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そうして9.11によって一種の心の悟り、目覚めを経て、ご自身の人生に対する価値観が変わったと。 |
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そうですね。表面は普段の生活に戻っていても、内面は何か心の中で新旧の自分が入れ変わっていくような、二つの潮流がうねり合っているような見えない葛藤がありました。それで、これからを生きることへ向かう旅に出たわけです。
2004年8月に、ニューヨークからタイ王国とカンボジア王国を巡りました。旅程中、カンボジア4日間でしたが、新たな発想を導きだすための旅となりました。五感を通してそこで享受した、自然、空気、人、文化、伝統、歴史。ジャングルの呼吸をも感じました。生きることって、呼吸を重ねることなんですね。滞在中のホテルでは、毎夕ジャスミンの小さな花輪を作って枕元においてくれました。その香りに包まれて眠り、目ざめて心が癒されていくのを感じました。ジャスミンの香りによって、心にも変化が起きたのです。
(著書より引用)
「私の本来の姿とは何か。そのような思いを馳せながら、メナム川を見つめていた。「そうだ、ここからまた、自分の感じる道を歩いてみよう。自分らしい仕事を見つめてみよう」。その瞬間、何かが戻ってくる感がした。懐かしい感覚。この感覚は、一体なんであろう。クリエイティブな仕事をしていたときの感覚にも似ている。でも、違う。何かが、ふっと近づいてくる。「もしかして、この香り?、ジャスミンの香り?」。香りに包まれることによって、何かが揺さぶられる。どこかで私の心身を刺激しはじめている。何かが、蘇ってきている。不思議な感覚であった。
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私は子どもを産んでからは香りをまとう習慣がないのですが、このジャスミンの香りは本当に自然で気持ちが和らぎますね。 |
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人工的な香りにはアルコールが入っています。この「LA LUMPINI(ラ・ルンピーニ)」はコスメでいう「香水」とは違います。香りは目に見えるものではなく、感ずるもの。形にも表わすことができない。それなら香りを顕して心と身体に、何かを話しかけるものをクリエイトしていこうとインスピレーションが湧いたのです。香りによって、人に新しいスピリットを吹き込んでいけるのではないかと。
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このジャスミンの香りを、事業化する構想となったわけですね。 |
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はい。事業としてどのように展開していくか。その構想は、ほぼ固まっていました。まず、香りによる安らぎ、癒し、活力活性を促す商品の開発をしていくこと。ニューヨークへの中継地点となるタイ王国で、これらのコンセプトを一晩でまとめました。そのスピードは、自分で振りかえっても驚くべき速さでした(笑)。
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「LA LUMPINI(ラ・ルンピーニ)」のラインナップの素晴らしさや商品については別途下記でご紹介させていただきますが。そのプロダクトに思いを昇華されて、一方でカンボジアという国へ貢献もされています。 |
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地球上では争いが絶えず続いています。その根底にあるのは、人の心のあり方。この国に一番必要なのは、教育です。教育支援によって、一人の子どもが成長し、自立する道を見出すことができる。人間として生きる力を身につけないと現状から脱せないのです。
生きる喜びを与えなければなりません。 私が現実的にできることは、経済的支援、教育支援、人的貢献。事業がうみだす利益があれば、それは可能です。それがライフワークの最終的な着地点です。
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社会起業家として大きなテーマに取り組まれていらっしゃって、尊敬します。私は困っているお母さんや頑張っている人をほおっておけなくて、いろんな小さなプロジェクトを展開中です。思いを共感、共有できる人たちとつながっていきたい。儲ける・儲からないよりも、大切なのは人とのつながりだと思っています。目には見えない糸でつながっているというか。 |
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私は、やっとひとつの地点に立ったに過ぎません。これから終生かけてさまざまな形を描きながら、自らに問われた命題を果たしていきたいと願っています。
(著書より引用)
ジャスミンの香り、
これは、自身の神秘の香り
この香りは、そこはかとなく深く甘い香り
だが、逞しく生きる力、生命力であった
The scent of jasmine
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ありがとうございました。
「LA LUNPINI(ラ・ルンピーニ)」は本当にいい香りで、いただいてから毎日使っています。暑い日が続きますがぐっすり眠れますし、なによりも汗をかいても嫌な気分にならない!素晴らしい商品です。このプロダクト誕生まで数々の試練がおありだったことでしょう。すべてが記述されている遠藤明子さんの著書をぜひお読みください。
私の大切な友達、9.11テロで夫を亡くした杉山晴美さん(マザール「美女ブログ」でも連載中)は、あの時お腹にいたベビー(三男坊)も今年小学1年生。三兄弟皆、お母さん思いの素直で賢くやさしい心の子です。あの日から7年。それぞれが時を刻んで、希望をもって生きています。生きることってしんどいことだらけですけど、目に見えないものに触れたとき、何かが心で動くものです。香りとか音楽とか風とか、そして人との縁。そういうものを大切にしていきたいです。「LA LUNPINI(ラ・ルンピーニ)」から何かを感じてもらえるといいな。
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