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【KAKERUインタビュー No.42】
前回に続き、今回もフジサンケイビジネス女性起業家コンテストつながりでご活躍される女性をご紹介します。2003年に起業され仕事の上でも人生の上でも、ワーキングマザーの大先輩の橘田佳音利(きつだ・かおり)さん。株式会社Frajouterie(フラジュテリー)という会社の代表取締役として、主にマチュア世代(35歳以上)の女性の再就職支援を手がけていらっしゃいます。
44歳で起業、というのは今の時代はそれほど驚くことでもありませんが、橘田さんがその仕事を天職とされるまで、茨の道でした。29歳で別居、30歳で離婚をし、その後さまざまな仕事をこなしながら女手ひとつで二人の息子さんを育て、公私共に闘いの日々。フラジュテリーがターゲットとするマチュア世代とは、マザールメンバーも半分以上が占める割合。マチュア世代にどんなエールを送り、具体的にどういった支援をされていらっしゃるのでしょう。大変だった過去のことなど微塵も感じさせず、美しく軽やかにお話ししてくださいました。
橘田佳音利【Kaori Kitsuda】 株式会社Frajouterie(フラジュテリー)代表取締役・エグゼクティブマチュアバイザー 橘田佳音利【Kaori Kitsuda】

株式会社Frajouterie(フラジュテリー)代表取締役/エグゼクティブマチュアバイザー

1958年東京都生まれ。大学卒業後、住友電気工業(株)に入社。結婚のため退社。結婚後半年で仕事復帰。営業・営業事務・CAD請負業・モデル・経理・仕入/売り上げ管理・販売・人事・福利厚生事務・給与計算・入札業務・実用新案申請業務・CGIプログラマー・新聞社(フリーペーパー)営業/記者など。 個人経営者・株式会社川西工業代表取締役・共同経営者としてこれらの実務経験を重ねる。
多くの仕事経験や個人の体験から、女性・ミドルエイジの就業支援のため、雇用・創出のトータルサポートをしてゆくべきだと感じ、会社設立に至る。
大学生の息子二人の母。趣味はヨット(全日本選手権レディース優勝・ワールドウーマンズセーリングチャンピオンシップ参戦)、歌を歌うこと。
 
マザールも復職希望のお母さんや、転職希望の子育て中のママの相談に私がカウンセリングすることがあります。でも、うちは就職先を斡旋するところまではお世話できませんので、そうした方々に橘田さんのような会社をご紹介したいなと思っています。具体的にいうと復職希望の女性に、社会人として働くための教育研修をされていらっしゃるのですよね。
 
仕事をしたい気持ちがあっても、根性が足りない方が少なくないんですね。例えば、家族に反対されているから……で、働くことが夢と憧れで終わってしまう方もいる。家族を説得できずに、自分を納得させることはできません。そして、いくらスキルが高くても、自分自身が自らを認めていないと希望する職に就けません。
弊社では、企業にアピールできる自分をつくり就職に成功するための「ウィメンズセールスアッププログラム」(2時間5回6万円※登録者は3万円)と、弊社で講師を担当できるスキルを身につける「マチュアバイザー養成プログラム」(有料)があります。1回2時間(6000円)の「就職成功入門講座」も開講し、就職や転職の方向性の見極めを目的にしています。
 
35歳以降の女性を対象にしていらっしゃるのは、橘田さんが42歳で復職先を探された時の苦い経験がおありだったとか……。
 
はい。42歳での再就職活動は人生最大のピンチでした(笑)。応募してもすべてなしのつぶてで。「せめて面接を」と電話をすれば、「年齢制限見なかったんですか」と冷たくいわれ……。自信もプライドも全部崩れて心身共にボロボロでした。派遣会社に紹介された職に就くまで7ヵ月も掛かりました。それで、「女性が年齢にとらわれずに、自立して働ける社会づくりに貢献したい」という思いで、44歳で起業することになりました。
 
ご自身の経験がエネルギーの源となっていらっしゃるわけですね。「35歳が壁」といわれる女性の再就職市場で正社員採用の雇用を促進され、働き手だけでなく雇用する企業側への教育も必要では?
 
そうです。結局、企業の採用担当者がミドルエイジの女性社員にもつイメージは「経験がある反面、自尊心が強く使いづらい」というもの。それをどう切り崩すかがポイントです。仕事上で自分のやり方を確立していても、中途入社していきなり「この会社のやり方は変です」と言ったとして、たとえそれが本当でも、中にいる社員はいい気持ちはしませんよね。もし色々感じることがあっても、あえて1年間は沈黙して仕事をしてみることと私は説いています。会社に文句を言う前に、会社に必要とされる存在になりなさい、ということなんです。
 
それって復職希望の方だけでなく、新入社員にも通じるお話ですね。私も新卒当時、かなりうるさい新入社員でしたので(笑)、当時の上司もなだめるのが大変だったに違いない!と今なら思います。ところで、橘田さんは離婚されてシングルマザーとして働き続けていらしたのですね。どんなことが一番大変でしたか?
 

私の場合、30歳で離婚した当時2才の長男と0歳の次男を抱えていました。とにかく子育てしながら色々な会社で仕事をしてきました。お茶くみでもコピー取りでもとにかく全力で。20年くらい前の当時は、まだ「シングルマザー」とか「バツイチ」なんてキャッチフレーズもなくて、「出戻り」とか「片親の子どもは非行に走る」という言い方を平気でされていました。「私、離婚していますので」と正直に年度初め、学校の保護者会で言うと、さ〜っと潮がひくようにヒソヒソと引かれてしまったり。
そういう偏見をもつ人や学校の先生からの差別に、子どもを守るのは私しかいないと思って、頑張ってきましたね。とにかくさびしい思いをさせまいと。在宅でCADの仕事をした時は昼に営業して、3日仕事で徹夜したら4日子どもと一緒に遊ぶ!わざわざ学校をお休みさせて、TDLに連れて行ったこともあります。

 
血のにじむような努力を……頭がさがります。離婚して働く女性も増えましたが、働き続けるために離婚する人もいます。幸せな選択は、一概に結婚生活を続けることではありませんものね。ところで橘田さんの会社では、正社員として企業へ再就職している方が受講生の9割だそうですね。再就職がうまくいく人・いかない人という違いとは?
 
弊社が企業にご紹介して正社員として採用された最高齢の方は53歳。また、弊社研修を受けご自身で希望の企業へ面談に行かれて正社員として採用された方は61歳の方もいらっしゃいます。うまくいく人というのは、心がクリアになれる人です。自分自身の良い点を認識して、周りに寛容な人。逆にダメな人は、「あたしが何でこんなことを……」とつぶやいてしまうオバサン。先ほども申し上げましたが、長く勤めるには新しい就職先の企業のやり方に馴染むことができるかどうかです。
 
なるほど。橘田さんはたくさんの企業で職種を経験されてこられていますが、起業をされる前の努力でされたことや、起業後でご苦労されたことというのはいかがですか?
 
私は第3回フジサンケイビジネス女性起業家コンテストで入賞しましたが、コンテスト応募初日に書類を提出したんですよ。第一印象、そういう気合いは大切ですよね。ホームページの制作もプログラムもすべて自分で作業して、検索でもサイトが引っ掛かるようにワードの仕込みをしたり。起業後は、雇用する企業を見つけないとならないので異業種交流会でたくさんの会社の方と名刺交換をしたり……。
 
起業されて6年目ということで、日経ウーマン、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008キャリアクリエイト部門3位、総合10位を受賞された雑誌も拝見しました。着々と知名度もあがっていますね。
 
将来的には「マチュア・トータル・サポートサロン」を全国展開したい。転職や再就職をする際に痛手を受けている人にメンタル面のケア、研修を通じてエールを送ると共に、甘ったれるな!と喝を入れます。企業のコンサルティングもします。いわば「民間ハローワーク」という役目を担う場です。働きたい人が勉強できる場所にすること。
例えば、キャリア女性がもつバッグの開発をしていますので、そういう物を買えたり、外反母趾用の靴は売っているけれど、手持ちの靴を外反母趾用に作り変えることができるシューズケアができるような複合的な要素を併せ持つサロンを目指しています。
 
素晴らしい構想です。私は、絵本とおもちゃとオーガニックな食を楽しめて、いろんな世代が集える「マザールカフェ」を地元につくりたいと思っています。『女性の仕事探し』というテーマで何かご一緒できることがあればぜひ!では、最後に35歳以上の復職したい女性へメッセージをお願いします。
 
35歳以上の女性には、経験ときめ細やかな対応力という大きな強みがあります。自信を喪失している場合は、自分のいいところを見つけて、そこを意識するようにしていけばいいのです。他人と比べる必要はありません。昨日より今日はいい自分なんだ、と肯定しましょう。そのためには、「ほめる練習」をしてください。前向きな人には、必ず社会の扉は開かれます。
 
ありがとうございました。
復職といえども、パートやアルバイトなら仕事は見つかる時代です。橘田さんが復職でこだわる雇用形態は「正社員」。その代わり、給与に見合うだけの働きのできる人を育成し発掘されていらっしゃるのです。マザールの考える復職は、好きなことを仕事にできる人。企業人であっても、個人であっても、努力する仕事人は周りの人を幸せにします。たとえ誰にも評価されない時期があっても、自分で自分を鼓舞することを忘れちゃいけない。そんなふうに橘田さんに励まされた気がしました。
 

株式会社Frajouterie(フラジュテリー)のHP。なんとプログラミングも社長自らがされたとか!

イエローのスーツがよくお似合いの橘田さん

日経WOMAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008が発表された2008年1月発売号

毎年活躍した企業の女性に贈られる輝かしい賞。橘田さんは総合10位にランクイン

キャリアクリエイト部門では3位を受賞。活躍が期待されます

日経WMのインタビュー記事でも、仕事について熱く語られています

「輝く女性経営者50人」(フジサンケイビジネス編)という書籍でも紹介されました

「キャリブリ」という名のバッグを商品開発。ネットでも販売中。マチュア世代に広めたい!

 

 

 

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