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【KAKERUインタビュー No.41】
一昨年の春、第5回フジサンケイビジネス女性起業家コンテストで私は小さな賞をいただきました。マザールは2004年4月に開業したものの、仕事が軌道にのるまでは山アリ谷アリの連続でした。が、この賞をきっかけに起業の意味合いが深くなり、おかげさまで仕事に弾みがつきました。私は何をすることで価値をうみだせるのか?どんなことなら楽しく続けていけるのか?……など考えながら新しいことに取り組んでいます。
同期で入賞された方に先日、懇親会で再会しました。今回ご紹介するのは、兵庫で頑張る同世代の助産師さん。産院が減り、産む不安が大きくなる一方、こんなふうに助産師さんのネットワークがひとつになれば、大病院をあてにするよりも心強いと思います。ご自身もお二人の息子さんを子育てしながら、助産師として働き続け、その上起業までされた南田さんに「ママズケア」で取り組む活動、発するメッセージを伺ってみました。
南田理恵・助産師/株式会社ママズケア代表取締役 南田理恵【Rie Minamida】

助産師/株式会社ママズケア代表取締役

1968年東京都北区生まれ。慶応義塾看護短期大学卒業後、21歳で学生結婚して関西へ。兵庫県立衛生学院助産学科卒業。神戸や阪神間の市民病院勤務後、育児休業中に助産所にて子連れ修行。育児休業明けに分娩台でのお産介助はできないと退職後、市役所勤務。次男出産後、嘱託職員だったため育児休業が無く、産後2か月で復帰。サークルとしてベビーマッサージクラスを行っていたが、朝日新聞の取材掲載をきっかけに市役所退職。ベビーマッサージクラス、自宅出産&母乳ケアの出張開業助産師となり、助産所ママズケア開業。2006年株式会社ママズケア設立。
家族は5歳上の夫と、 私立中学1年と小学2年生の男の子。
 
助産師さんという職業は、なぜかお婆ちゃん先生のイメージが強かったので、丸の内にお勤めしているお姉さんのような南田さんが助産師さんと聞いて、正直「うわー、こんなキレイな方も就くお仕事なのねー」と失礼ながら驚きました(笑)。なぜ助産師になられたのですか?
 

子どもが大好きだったことと、「死の医学」を卒論にしており、死を考えるにはまず「生」からと助産師になり、赤ちゃんにはまりました。 昔から柳田邦男さんの著書を読んだり、死を受容することを考えていたんですね。死の逆は、生であり、その現場に携わることにしたのです。

 
会社の名前はママをケアするから?社名の由来について教えてください。
 
ママズケア=「Mamas'Care」で、ママと赤ちゃんのためのお手伝いさんといった意味です。Mama's Careではないんですよ。
例えば、ベビーマッサージは赤ちゃんのためにはいいものですが、教室に来ることでお母さんもスッキリできる。ママは自分のためにおしゃれをして来るようになるだけでも、仲間に会える楽しさがある。赤ちゃんのためにも、お母さんのためにも、役立っています。
 
なるほど。でも助産師さんの職業としては長い歴史のなかで確立されていらっしゃると思いますが、なぜ起業されようと考えましたか?
 
助産師の数は少なく開業助産師の数は年々減っています。お産が昼夜関係なく、訴訟なども多いからです。このままでは助産師の存在感がなくなってしまうという危機感をもっていました。個人事業としての助産師が大変なら、組織として助産師が力をあわせて仕事をしたらどうかと。助産師の仕事の幅も昔ながらのお産だけでなく、女性のライフサイクル全体に関わる役割があるのではないかと考え、組織化するために起業しました。
 
お産婆さんとしてだけでなく、産まれてからの人生に寄り添ってくれる人という感じですね。小児科医も減ってしまって、産まれた直後から子どもの育ちを見てくれる先輩や先生(主治医)がいる・いないは人生にとって大きいですよね。お子さんにマッサージをするとどんな効果が見られるものですか?
 

ことばでは伝え合えないことも、マッサージをすると伝えることができるように思います。思春期の男子とまともに話すとすれ違うこともあります。背中や足をマッサージして、気持ちを伝える手段にしています。また、次男は喘息やアトピーがあるのですが、呼吸循環器系が強くなり、風邪をひかなくなりました。

 
うちの息子も保育園の先生がマッサージの効能を教えてくれていて、夜寝る前に足とかお腹、背中を手でさすると気持ちよくて、ますますおしゃべりになりました(笑)。今もたまにしますよ。さすがにあんまり触るとうるさがられますけど。
ところでいまの新米ママたちは、10年前と比べて何か変わりましたか?
 
「私がよいか悪いか」という「個」に気持ちが向いてきたように思います。
「私が痛いから、よく出て張るおっぱいを止めたい」「私が痛いから、おっぱいを止めたいけどあげる」「私がつらいから、夜ぐっすり寝てくれるミルクにするなど、「私がつらいことはしない」。そこには赤ちゃんにとってどうかということは、考えられていないんですよね。もちろん、赤ちゃんにとっていいこととしたいと考える方も多いです。
生後1ヵ月の赤ちゃんを育てるお母さんが「痛いから、おっぱいを止めたい」というので、お母さんの意思が固いのであれば…とお手伝いしたこともあります。 無痛分娩や帝王切開などの相談にも乗っています。
核家族2世なので、育児の伝承がなく、ネットなど情報あるものの、自分に何があっているのか見つけられず、子育てが手探り状態でしんどそうです。
 
とても意義深いお仕事だと思いますが、全国展開を考えられていますか?また、この活動がもたらす社会的影響力とは?
 
いえいえ、兵庫県の隅々までベビーマッサージを浸透させるのも大変なくらいで。まずは兵庫県内の田舎をまわります。
子どもとのふれあい方がわからないという方がなくなることを目指しています。
 
ご子息は今春から第一志望の私立中学へ入学されたんですよね、おめでとうございます!塾弁生活時代はいかがでしたか?マザールで間もなくスタートする「あべんとう」については?
 
仕事をしながらの塾弁届けは大変でしたね。半分くらいは塾の入っているビルのデパートで、どどーんと豪華な弁当(罪悪感からか!?)を買って届けていました。でも、栄養バランスはいまいちで、健康のことを考えると心配でした。仕事もして、子どもも塾に通わせて……となるとお弁当が大きな問題。毎日に近い夕食をしっかり安心栄養のあるものを食べさせたいというニーズにぴったりです。素敵な企画ですね。
 
ありがとうございます。では、最後に南田さんがママズケアを通して将来的に実現されたいこととは?
 
お産は夜に多いし、乳腺炎などおっぱいケアも休日関係なく連絡があります。病院に勤めても夜勤はあるし。といって退職して家庭にはいっている助産師や、定年退職した助産師が、再び活躍できる場を創りたいです。
母乳ケアもひとりで受けると負担が大きいので、ママズケアがベビーシッターの派遣のように、登録している助産師を紹介したり、研修します。助産師は仕事の場が増えるし、困っているママたちの助けになるのではと思っています。 助産師という先生的な立場ではなくて、先輩お母さんというイメージを大切にしています。将来的には助産師がもっと身近な存在になるといいなと思っています。
 
ありがとうございました。
起業するのはそこそこエネルギーがあればできますが、立ち上げ当初のパッションを持続させることの大変さで多くは途中で挫折すると聞きました。でも、フジサンケイの懇親会で再会した南田さんをはじめ他の起業家の方々も、この仕事(サービスや商品)を待っている誰かがいて、そのうえ自分が好きで続けていることだと強く感じました。儲かる・儲からないという数字面で判断するだけじゃない。皆、根っからのお人よしなんですね。
若いママだけでなく、高齢出産のママにも寄り添ってもらえるとうれしいです。ぜひ関東方面にもネットワークを広げてください。
 
以下の画像は南田さんの了解を受け、ママズケアHPより抜粋紹介

生後間もなくから人の手で触れると赤ちゃんも心地よさがわかります。ほら、うっとりしてるでしょ?

ママズケアは芦屋市役所の委託を受けて新生児向けの教室をたくさん開催しています。どの会も熱気むんむんです!

ママ友ができるだけじゃなくて、同世代のベビーと友達になれるのもうれしい♪見詰め合って何思う?

おむつをさせてマッサージ♪気持ちがいいな!と体感できると心の発達も促します

南田さんの長男くんを次男くんがマッサージする構図。男同士、気持ちいい?

ベビーマッサージの教室は全国各地に広がってきました。関東圏ではハンドネイルも取り入れているとか

南田さんがケアするのは赤ちゃんだけでなく、お母さんのおっぱいを止めるのもお手伝いしています

生理的には女性の産み時は15歳なのだそう。40歳はお婆ちゃんの域?

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