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【KAKERUインタビュー No.37】
劇団俳優座の女優として、多くの舞台で経験を積まれてきた田野聖子さん。華奢でかわいらしいイメージですが、俳優座の劇団員としてキャリアを重ねてきた演技力は、国内外で高く評価されています。息子が夏にお世話になっているミステリオキャンプでは、中高生の演劇指導もされていらっしゃいます。2月24日〜3月2日俳優座5階稽古場にて行われる「コンスタント・ワイフ」は、外科医ジョンの忠実(constant)な妻コンスタンスの妹役として出演。また、この夏、東京とニューヨークで一人芝居を上演予定。監督も脚本も手がけられ、女優として新境地を拓かれています。「女性の自立」というテーマの演劇で、どんなメッセージを与えてくえるのでしょう。3月2日(日)午後1時半からの回に私も観にいきます。演劇に打ち込む聖子さんに、その思いを伺ってみました。
田野聖子・女優 田野聖子【Seiko Tano】 
女優
http://www001.upp.so-net.ne.jp/seiko/

1971年福岡県生まれ、京都、北鎌倉を経て千葉県で育つ。現在は東京都在住。私立昭和学院高等学校から、日大芸術学部映画学科へ進学。演技コース1年に在学中、「劇団俳優座」一般公募研究所4期生の入所試験に合格。以来、舞台を中心に映画、テレビ、CM、声優などもこなし幅広く活躍。2003年から2006年までNYを拠点に活動し、一昨年に再び日本へ戻る。
現在は、俳優座劇団員として公演に出演する一方、今夏は『女性の自立』をテーマにした初の脚本・監督で、一人芝居を日本とNYで連続公演を行う予定。 舞台上演歴など詳細はこちら>>

俳優座ラボ公演
「コンスタント・ワイフ」 2008年 2月24日(日)〜3月2日(日)  俳優座5階稽古場(六本木)にて

ジョンは、妻の親友マリー・ルイズと堂々浮気中!そうと知りつつ、その様子を静観する妻・コンスタンス。さて、1年後に彼女がとった行動とは……?! 幸せだった2人の結婚生活は崩壊してしまうのか?? そして一体、夫にはどんな報復が待っているのでしょう??
『The Constant Wife』は1926年にニューヨークで初演され、1929年には”Charming Sinners”として映画。2006年にはそのリバイバル上演がブロードウェイのトニー賞4部門でノミネートされるなど、いまだ根強い人気を誇るW・サマセット・モーム(英)の傑作コメディです。モーム版『人形の家』とも言われるこの作品、俳優座では18年ぶりのリニューアル上演。遊び心いっぱいのイギリス風習喜劇。

◎作/W・サマセット・モーム ◎訳/志賀佳世子、アルベリィ信子  ◎演出/岸未朝 
◎出演/執行佐智子、天野眞由美、河内浩、塩山誠司、井上薫、田野聖子、林宏和、小澤英恵、小田伸泰 ◎前売り開始/2008年1月15日(火) 一般 3500円 学生 3000円  ご予約はこちら>>
 
演劇の道へ進まれた理由というのは何だったのでしょう。何がきっかけとなって舞台女優に?
 

小学6年生の頃、卒業アルバムに10年後の自分について書いたのですが、そこでもう「舞台女優として舞台に立っている」と。3才頃から祖母の入院している病院へお見舞いに行くと、他の患者さんを相手に歌ったり演じたりして拍手を浴びていたので、その喜びが根底にあるのかもしれません。合唱団にも所属していました。アイドルやタレントに憧れていたのとは違って、舞台に立ちたかったんです。

 
その頃の夢を初志貫徹されていますが、中学校も高校も演劇を選ばれた?
 
中高時代は、地域のアマチュア劇団に所属していました。その中で、演劇を学んだというよりも、小学生から高校生までいるメンバーとの団体生活で、人と人との関わり方を学んだというのは大きかったです。大学は日芸の映画学科演技コースへ進みました。1年生の時に、俳優座の試験を受けて合格。研究生として1年過ごし、それ以降は女優として舞台を踏んできました。
 
俳優座の試験というのは、どのくらいの方が受けてどんなことをテストされるものなのでしょう?
 
私が受けた年は、900人くらい受験して12人が合格しました。一次試験は筆記、面接、パントマイム、朗読。二次試験はテーマを与えられて演技のテスト。合格しても1年目は研究生、2年目から準劇団員。毎年「査定」がありますし、最終的に劇団員として残る人は一人か二人。舞台に立つ回数も毎年違います。
 
厳しい世界ですね。聖子さんはニューヨークに生活拠点をうつしていらした時期もおありですが、あちらでは演劇の勉強を?
 

2003年から2006年までNYで過ごしました。演劇と少し離れた生活をしていました。もちろんあちらでミュージカルやオペラ、バレエなど素晴らしい観劇をたくさんみて、文化がそこらじゅうに落ちている街でぜいたくに過ごしました。ただ、NYの生活を経て、俳優座の看板の下で自分が今まで守られてきたことを身をもって感じましたね。NYでは、私はただのアジア系の女性。その分、悔しさも味わいました。NYで過ごした4年間は、何一つ無駄な時間はありませんでした。

 
女優という仕事のやりがいとは?
 
人生をえぐりだして、自分との闘いをしないといけません。研究員時代の4年間、同期は次々とデビューしていくことに焦りを感じていたこともありました。でも、その時間があったからこそ、自分と向き合うことができた。尊敬する女優の故・杉村春子さんがおっしゃっていたなかで「今の私があるのは、若い頃たくさん時間があったから」という言葉がありました。私にとっても、何一つ無駄な時間ではなくて、自分の引き出しになることばかりでした。時間は流れず、積み重なっていくものです。お客様が演技を見て、心を動かしてくださる。女優はやりがいのある仕事です。
 
今度の公演を拝見するのが楽しみです。簡単にどんなお話かをご紹介いただけますか。
 
モーム版「人形の家」といわれる作品です。舞台は1930年代、イギリス。上流社会の奥様の心理が描かれています。夫の浮気が発覚しても落ち着き払っている妻・コンスタンスの妹にあたる役が私です。これまでは、「キス女優」と呼ばれるほど、恋にいきる役が多くて、芝居中いつも誰かと恋をしていました。でも、今回、演出家の高岸未朝に「この役は聖子さんしかいない!」と指名されまして(笑)。なぜなのかは、私にもわかりませんけれど。
 
沈着冷静でいるコンスタンスを妹から、どんな視線で語るのか、おもしろそうですね。
 
セリフは表面的ですが、おなかの中で感情が見え隠れする。そのシニカルさはおもしろいです。主人公の結論に納得する人もいれば、わからない人もいると思う。いろんなタイプの人が登場しますから、誰かの役柄に感情移入できるかも。
 
今夏は、「満州に生きる女性の姿を描いた一人芝居」を東京とニューヨークで公演するなど、新しい試みをされるとか。
 
はい。一人の女性の過去と現在を描き、日本人にしか伝えられないメッセージを伝えたい。初めて自らプロデュースし、演じます。国が起こしている問題で、傷を負うのはいつも市井の人。そういうものを背負って生きていく人間の物語です。

この一人芝居に関しては、東京とNYで生活をした私だからこそ感じ、日本人の私が世界に向けて発信できるメッセージだと思いました。 今回は、今まで演じる側の私が、初めて自分で舞台をプロデュースします。新しいことを始めるには何でも勇気が必要です。たくさんの壁にぶち当たります。でも、誰でも不可能なことはないのです。たくさんの試練があるとは思いますが、諦めずに成功させるつもりです。6月12日〜15日は東京・下北沢で。7月2日〜15日はニューヨークでの公演。この作品は、いろんな国の人に発信したいです。
 
ありがとうございました!
舞台の練習は毎日12時頃から夜9時過ぎまで稽古場で続くそうです。その中で、自分自身の引き出しをあけ、悩み苦しみながら、どんな演技で表現すれば見ている人の心を動かせるかを考えるのでしょう。ものを書く仕事も、うんうん苦しむ時間ばかりです。それでも、やめられない魅力があるわけです。公演チケットは、どの日程ともお席は残りわずか。自分自身を振り返る時間になるかも。ぜひご覧ください。
 

*ご紹介する写真は、すべて田野聖子さんの許諾を得て掲載しております

 

東京・NYで公演の一人舞台より

「十二夜」のCDレコーディング風景

主演舞台「我らが祖国のために」メアリー役より。

5年間続いた主演舞台「十二夜」ヴァイオラ役より、双子の兄セバスチャンと。
(左が聖子さん)

聖子さんが所属される劇団俳優座のホームページ。ここから予告やチケットの予約ができます。

田野聖子初監督映画「会いたくて」のロケ地での取材。秋田さきがけ新聞記事に掲載された記事は聖子さんHPでご覧いただけます。

鹿角が撮影の舞台となり、鹿角の若者が出演する映画ということで、地元ではかなり話題になりました。

高校生のラブストーリーを約20分のショートムービーとして仕上げた作品。
今年は世界各国の映画祭に出品する予定!

 
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