清代さんの絵は、背景とか描きこんでいらっしゃらない場面でも、なぜか懐かしい香りがします。子どもの頃から、やはり絵がお好きでしたか。 |
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小学生時代から絵の仕事をしたいと漠然と思っていました。学校の絵のコンクールみたいのには必ず賞をいただいていましたね。小学2年生の頃、あさりちゃんという漫画のキャラクターを水彩画で描いて先生にあげて喜んでもらったり。5年生の頃は、作文を書かせる先生で、私はその頃、新井素子さんの本が好きで文体を真似てラフに書いていたんですね。しゃべり言葉で。それで「おもしろいやつだ」と思われていたようです。中学生になって、漫画を真似て描いたり、MOEという雑誌を見つけて買って読んだり。
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ご家庭では、どんなお子さんでしたか。
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私は、中学生になってすぐに母を癌で亡くしました。7つ上の姉は早くに独立をしましたし、サラリーマンの父が毎日お弁当を作ったり、家事全般を担って育ててくれて。今思うと、どうして仕事をしながらあれほど家事もきちんとできたのでしょうね。父には頭があがりません。 |
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思春期の娘にさびしい思いをさせまいと一生懸命だったのでしょうね、お父さん。清代さんの作品に流れるやさしさは、ご自身のそうした経験から発しているのかもしれませんね。大学を卒業されてすぐ作家活動に入られた? |
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大学時代から「絵本創作研究会」に所属して、創作に取り組んでいました。卒業後は社会人にはならず、アルバイトをしながら作品を描いて出版社を回っていましたね。バイトはファーストフード(フライドチキンで有名な某チェーン店)で接客をしていました。あと関東近県のスーパーに派遣されて、新商品販売のマネキンとか。ファーストフードではスピードを求められてプレッシャーを感じました。私には、この仕事は務まらないなーと思っていました。マネキンの仕事では、その地域の人たちの生活に触れることができて楽しかったです、人間観察という意味で(笑)。対人恐怖症傾向にあった自分の性格は、このアルバイトのおかげで改善されました、ずいぶんと。 |
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清代さんのイメージですとオーガニックカフェで働いていたような……。ファーストフードの店やスーパーで「いらっしゃいませ!いかがですかぁ〜」と接客されていたのは想像しにくいかも(笑)。ところで、絵本の出版社は作品を持ってたくさん回られました? |
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いえいえ、2社ですね。そのうちの一社、福音館書店からデビュー作を出版させていただきました。営業に回った時は、すぐお仕事に結びつかなかったのですが、同じ会社の別の編集者からお声をかけて頂いて。デビュー作「みずたまのチワワ」(97年・福音館書店)が誕生しました。 |
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10年前ですよね。その後、数々の作品を手がけてこられました。 |
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月刊誌「こどものとも」「おはなしチャイルド」などの作品や、ビリケン出版で書店売りの絵本を初めて手がけました。それまでは決まった部数のものを作るものでしたのでそれほど感じていませんでしたが、初めて売れるか……という緊張感がうまれましたね。挿絵のお仕事は10冊くらいしています。佐藤さとるさん作の「いってかえって
星から星へ」、「どんぐりあつまれ」など幼年童話の挿絵、松居スーザンさん作の「海辺のおはなし」。
1999年には作と絵を手がけた「みつこととかげ」、その後「おばけがこわい
ことこちゃん」や、最近ハードカバーになった「トマトさ ん」など。「ねえ だっこして」は、あえて背景を描きこまずに、空白をいかす描きかたをしました。着色するのに時間が掛かりました。原画を描くのに時間を掛けるほうです。自分でお話を考えるのは最後まで楽しいです。 |
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11月に個展をされるアンデルセン童話の挿絵も、これまでの絵本とは違う味わいがあります。どうしてアンデルセンを選ばれたのですか? |
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2005年に『アンデルセン生誕200年祭』を知ったのがきっかけです。
その年の初めに、ピンポイントギャラリーの企画展 (ピンポイントの小さなアンデルセン展)があり、
1枚描いてみたところなかなか好評でしたので、個展(2005年6月と12月)のテーマをアンデルセンに決めました。
それに関連して自伝・伝記を読んだり、アンデルセンの生まれ育ったデンマークを訪ねたりしているうちに、興味のつきない作品、作家だなと思うようになりました。
同じテーマで続けて制作してみると、自分でも色んな発見がありますし、見て頂く方にも続きという感じで、進み具合が見えて面白いかなと思い。
アンデルセン「雪の女王」のお話からイメージを取って15点くらい描きました。すべて読んで浮かんできた場面を描いています。アンデルセンの自伝はとてもおもしろいですから、ぜひ読んでみてください。 |
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アンデルセンは変人というか、かなりの心配性で、眠っているうちに死んだと誤解された人の話を聞いて、「死んでいません」と置手紙をして眠るようになったという話もありますよね(笑)。
清代さんの描く絵は、技術的にいうと基礎がしっかりされているというか。いつの時代のどの作品を拝見しても安定しています。人物の描き方にムラがありません。絵本作家で尊敬する方はいらっしゃいますか。 |
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林明子さんは、リアルな状況、実写的な表現を描ける方ですね。アングルが大胆ですし、凝って考えられているなぁと。子どもの視点で描くことに徹していて、リアルな世界が子どもにとって冒険の場所であることを改めて感じさせてくれるので、すばらしいと思います。
他、 チャールズ・キーピング(イギリス)は、 絵柄の印象が強いのですが、ストーリーも良いです。作家の世界観や登場人物への愛情がよく伝わってくる絵本作家だと思います。
また、ロバート・ブライト(アメリカ) は、もともと書く方の人だったようですが、絵も描いています。お話が面白いです!絵は無駄がなく味があります。
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---(一筆御礼)
ありがとうございました。ウクレレ歴9年という清代さん。2年前にご結婚されたお相手の旦那さんも、音楽をライフワークにされていらっしゃるとか。静かに、ずっしりと胸に迫る絵本は、やはり絵の力があってこそです。言葉を生業にしている私からすると、ジェラシーを感じるくらいモヤモヤとした感情をいきいきと表現されている素晴らしい作品ばかり。ぜひ、これから一緒に作品づくりをさせていただきたい絵描きさんです。個展、楽しみにしています!
■個展のお知らせ■
田中清代の絵本展
2007年10月15日(月)〜10月20日(土)
11:00〜19:00 最終日〜17:00
最初の絵本「みずたまのチワワ」から10年!
近作&月刊誌作品の原画(非売)と、「トマトさん」の銅版画による複製原画、小品、グッズ(販売)など展示。
会期中なるべく会場に居らして、本を購入下さった方にサインしてくださるそうです。
マザールの青山事務所もすぐ近所なので 私ものぞきに伺います!
Pinpoint Gallery
〒107-0062 港区南青山5-10-1二葉ビルB1
Tel.03-3409-8268
田中清代 個展
~H.C.
アンデルセン 「雪の女王」より~ おはなしのイメージ・vol.3
2007年11月12日(月)〜11月24日(土) 12:00〜19:00
土曜日のみ18:00まで
2年ぶりの個展は、引き続きアンデルセン。絵本の仕事とはひと味違うイメージをお楽しみください。
版画か、イラストか?という問いにも徐々に答えは出つつあり。そのへんも微妙に…とのこと。
ギャラリー福山
〒104-0061 中央区銀座1-23-4明松ビル303
Tel.03-3564-6363 Fax.03-3564-6366
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