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【KAKERUインタビュー No.21】
知り合いのカメラマンさんから『最近手がけた料理本のお仕事』というお知らせをいただいた一冊の書籍。それが今回ご紹介する飯尾さん母娘共著の「京都のお酢屋のお酢レシピ」でした。お酢でこんなにおいしそうな惣菜や飲み物ができちゃうのね〜と感心しきり。お酢といえども、飯尾醸造の米酢は基準の5倍量のお米で造る極めておいしいお酢。私たちが買うスーパーで売っている大手企業のあれとはまた違うのです。明治の時代から、粛々と受け継がれてきた真摯なもの造りは、どんな仕事でも見習いたい点がたくさんあります。飯尾醸造は、お父様とお母様、そして双子の兄妹である彰浩さんと淳子さんの4人で支えあう家族経営。家族皆が元気で一緒に目標をもって生きることは、人生最大の幸せかもしれません。お母様の飯尾さとみさんとお嬢様の飯尾淳子さんに、お話をうかがってみました。
飯尾さとみ【Satomi Iio】 京都のお酢屋・飯尾醸造(母)

京都のお酢屋「飯尾醸造」の4代目に嫁いで30年余り。酢造りひとすじ、職人気質の夫と二人三脚でお酢屋をきりもりする。蔵を訪れるお客様をもてなすことで、お酢料理の腕を磨く。自身でデザインと書を手がけた果実酢のパッケージは、「京都デザイン優品」に選定された。休日の楽しみは、お花と日本が鑑賞(特に軸物)。

飯尾淳子【Junko Iio】 京都のお酢屋・飯尾醸造(娘)

「飯尾醸造」の4代目夫妻の長女。男女の二卵性双生児として生まれる。早稲田大学卒業後、印刷会社に勤務。その後、飯尾醸造に入社し、お酢料理のレシピ、コピーライティング、ホームページ製作などを担当する。五代目見習い中の双子の兄と、東京・恵比寿の「フードマエストロクッキングスクール」の講師も務める。好きなものは、着物とうつわと旅。

飯尾醸造

http://www.iio-jozo.co.jp
京都・宮津で明治26年創業。当主・飯尾毅氏(左から2番目)は4代目にあたる。「おいしくて、しかも安全な最高のお酢を造りたい」という方針のもと、原料となる無農薬づくりから手がける稀少なお酢屋。よりよい原料へのこだわりと、手間ひまを惜しまない日本古来の製法を守った酢造りへの評価は高く、漫画『美味しんぼ』や『どっちの料理ショー』などでもとりあげられている。フードジャーナリスト、料理研究家、シェフなど、食のプロからの信頼も厚い。

 
大量生産のお酢とまったく違うおいしさだと聞いています。特にどんな点に差がありますか。
 

他のお酢屋さんとは原料と製法の2つの点で違います。 まず原料が、無農薬のお米だという点です。これは昭和39年から契約 している農家で栽培してもらっています。集落一帯が標高400mなの で機械すら田んぼに入れられないため手作業。でも農家の人たちも今70〜80代の高齢になってしまい、棚田(段々の田んぼ)が荒れてし まって過疎地になっています。そのため、現在では私どもの蔵人(社員)も棚田の一部を耕作しています。

そして「富士酢」の深い味わいのもうひとつの秘密は、たっぷり使う原 料米の量にあります。酢1リットルにつき200g。これは JAS規格が法律に定めた「米酢」と表示できる基準(40g)の 5倍量にあたります。新米を使用しているのでおいしさも違います。

次に製法について。昔ながらの「静置(せいち)発酵」という製法でお酢を造ります。タンクの表面の酢酸菌が、3〜4カ月と、 ゆっくり時間をかけて自然にアルコール分を酢にかえていく発酵法で す。時間と手間、職人の勘が必要ですが、醸造している間に酢酸と水が 調和し、まろやかで味の良いお酢を造ることができます。残念ながら多 くの酢メーカーでは、効率を優先させるために機械で人工的に空気を送 り込み、1〜2日で発酵を終えます。この速醸法は「全面発酵」と呼ばれます。 (※詳細はHPでもご紹介しています)

 

お母様はやはりお子さんが小さな頃から、お料理では無添加へのこだわりがおありでしたか。

 
そうですね。化学調味料を使った食べ物は作りませんでした。たまに何かの拍子に使った料理があると、「これ、お母さんが作ったのじゃない よね?」とすぐわかるようでした。それだけ舌が敏感になっていたので しょうね。無農薬の酢の仕事をしていたからこそ早くから学びました。 「富士酢」を支持してくださった、無農薬や無添加の食品の普及に取り組む消費者グループの方たちのお陰です。

 
男の子、女の子の双子ちゃん、小さな頃から育ち盛りに掛けては何が大変でしたか。
 
生まれたのがどちらも3キロずつあって大きかったんですね。幼稚園に4年通い小学校は給食でしたが、その後、中高6年間はお弁当。そして塾通いのため週2〜3回は塾弁。肉じゃがを卵でとじるとか、前の晩のをアレンジした料理が多かった気がします。レンジでチンは使わなかっ たですね。そもそも電子レンジはあまり利用しないんです。火にかける料理のほうが美味しいように思えて。
 
双子とはいえ、お二人にどんなことを教えてこられましたか。
 
1分違いで生まれた兄妹ですが、兄は行動力があり、妹は慎重派。私はあまり細かなことは言わず、「ひとつのことをキチンとやり遂げなさ い」と伝えてきました。生まれたときからお酢蔵が遊び場でだったものですから、仕事への真剣さは、知らず知らす身につけてくれたのでは。
 
同じように生まれてお育ちになのに、まったく違うタイプとはおもしろいですね。
 
小さな町で育っておりまして、幼稚園も小学校も36名1クラスで6年間同じ、中学になって初めて2クラスになって別々になりました。高校は同じ学校へ進みましたけれど。大学進学に際して三者面談というのがありまして、その時に初めて主人が息子の進学について「醸造科に進ん で勉強をしてほしい」と申しました。主人は文系出身からお酢屋の家業に入ったもので、醸造は独学で学んできたんですね。今まで子どもの育 児や進路について一度も何も言わなかった人でしたから、よほどの想いがあったのだと思います。 息子は、醸造科のある大学へ進学し、その後大手飲料メーカーに就職。 営業企画や教育の部署で仕事をしておりましたが、2年前に家業を継ぐために戻って参りました。
 
家族で支えあってお仕事をされているのは、うらやましいです。きっとお母様が働き者でいらっしゃるのでしょうね。
 
子どもが小学校に入る頃までは、11月中旬から3月末まで酒造りの 「杜氏」が蔵人を連れて4ヶ月間家に滞在していたので、朝から晩まで 食事とお風呂、寝床の支度で追われていました(笑)。親方の「杜氏」 は職人気質の実直な方ですので、気分を害されないようにおもてなしするのに心を砕きました。 でも、子どもはそんな親の気持ちもわからずに、子ども用にお肉料理を 作ったら「お母さん、このお肉おいしい!もっと頂戴よ〜」なんて大きな声でねだったり。「杜氏」さんたちにはお魚料理でしたので、内心焦っていました(笑)。
 
「こっちにも肉、一皿〜」なんて言われなくてよかったですね(笑)。ところで、新刊のレシピ本、素晴らしいですね。私も富士酢を購入して「お酢屋の麻婆豆腐」や「揚げなすの中華マリネ」をさっそく作ってみました。すごくおいしかったです!酢が違うだけで、こんなにおいしさが違うんですね。
 
レシピ本はHPで発信しているレシピの中から、いくつかを抜 粋して本にしました。簡単でおいしくて体にいい、お酢を使ったレシピです。この本をキッカケに、お酢ファンがさらに増えるといいなぁと。
 
きっとお酢の魅力に気付く人が増えます!私もその一人です。飯尾醸造の米酢「富士酢」のネーミングの由来とは?
 
「日本一のお酢を造りたい」という想いで、日本一といえば富士山だからですね。創業115年になりますが、製法、原料ともに大手メーカー とは、まったく違う昔ながらのやり方です。『小さなお酢屋でいい、自分の良心に恥じないお酢を造りたい』と考えています。たくさん売れるのはうれしいけれど、そうなることでお酢のおいしさが変わることがあってはならないという想いで造っています。
 
その心意気に、とても共感します。公私共にお忙しいと思いますが、お母様はこれからどんなことをされたいですか?
 
時間ができたらお稽古ごとをしたいですね。お花、※篆刻(てんこ く)。仕事から離れても、いつのまにか「富士酢」の役に立つようなこ とをやってしまいます(笑)。
※篆刻(てんこく):広い意味で「印」に含まれます。印鑑の仲間。書体は「篆書体」を使い、美しさを追求する。
 
ありがとうございました。
お話しをしていて感じたのは、息もぴったりの親子の仲良さ。お母様のさとみさんはおっとりした物腰でゆっくり言葉を選ばれてお話され、一方で朗らかな笑みを絶やさずしっかりとお母様をサポートされる淳子さんには、芯の強さを感じました。それと、お酢効果なのでしょうか。母子のお肌のきれいなこと。透明感あふれ、みずみずしい素肌。食べ物って、人の心を豊かにしますね。今夏は「お酢レシピ」に我が家も、はまりそうです。海外の友人にもお土産にプレゼントしたいと思います!
 

 

まろやかな旨みとコクの純米酢 サイズは3種類
630円(500ml)/1029円(900ml)/1722円(1800ml)

2007年3月に発行!
「京都のお酢屋の
  お酢レシピ」(アスキー)

飯尾醸造の看板、飯尾家の皆さんです

シンプル肉団子の甘酢あん

かぼちゃとなすの白酢あえ

紅芋酢とビールのカクテル

いんげんかぼちゃのしょうが酢ソース

 
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